2017 Fiscal Year Annual Research Report
複数被験者の眼球運動同時計測環境の開発と視線検知型英語学習プログラムへの応用
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15H05381
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 智栄 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (30726823)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロソディー / 眼球運動 / 視覚世界パラダイム / 文処理 / 第二言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、昨年度に続き日本語を含む複数の異なる言語を母語とする英語学習者の言語情報の使い方について英語母語話者との違いを明らかにする検証を行った。さらに、異なる種類のプロソディー情報が第二言語学習者の文処理に与える影響を明らかにするため、新しい実験として"Tap the frog with the flower."のようなPP attachment ambguity による構造的曖昧性を伴う文の解釈におけるprosodic boundary(プロソディー境界)の影響を調べる実験を行った。実験では(1a, b)のような文を使用した(%はプロソディー境界の位置を示す)。
(1a) The boy % will tap % the frog with the flower. (1b) The boy % will tap the frog % with the flower.
英語母語話者と日本人英語学習者の眼球パターンからは、両方のグループにおいてプロソディー境界が文構造分析に使われることが示された。特に興味深い結果として、英語母語話者においてプロソディー情報は文構造プロセスにおいて予測的に使われるのに対し、日本人英語学習者においては予測的な使われ方が観測されなかった。さらに、フィラー文のプロソディー情報のreliabilityを操作した結果、プロソディーがunreliableなときにはターゲット文の処理においてもプロソディー情報を使う度合いが低くなることが明らかとなった。これまでの研究から文理解には言語使用者がそれまで積み重ねてきた統計情報が用いられることが明らかとなっているが、本実験により、長期的に積み重ねられた言語経験による統計的情報のみならず、限られた環境下における短期的かつspeaker-specificな統計的情報が即時に文構造処理に影響を与えることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は日本語母語話者と英語母語話者の比較のみを行う予定であったが、中国語、スペイン語、ポルトガル語を母語とする英語学習者のデータの比較が可能となったことから母語の影響についてより詳細な検証が可能になった。さらに、プロソディーの影響について異なる複数のプロソディー情報を用いた実験を行っていることからも、第二言語理解における文処理プロセスを明らかにする研究としては順調に進展している。その一方で、ポータブル型眼球運動計測装置を用いた実験については、データ収集を行なった大学の倫理委員会の許可がおりずデータを公表できない状態にあるため、実験室固定型の眼球運動計測装置との比較が難しい状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた実験結果から異なる複数の言語を母語とする英語学習者の文処理プロセスを比較し、第二言語学習者に特徴的な文構造処理プロセスと母語の影響について成果をまとめる。実験結果について現在論文を執筆中であり、今年度中に3本の異なる論文に仕上がる予定である。ポータブル型眼球運動計測装置を用いた実験について大学からデータ公表の許可がおりていない件については、データ収集を行った大学の倫理委員会と連絡を重ね、適切な手続きを行うことで許可を得る予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Predicting native language from gaze2017
Author(s)
Berzak, Y. Nakamura, C. Flynn, S. & Katz, B.
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Journal Title
Proceedings of the 55th Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics
Volume: なし
Pages: 541-551
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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