2015 Fiscal Year Annual Research Report
サハラ南縁地域をめぐるモラル・エコノミー論的土地制度研究を通じた所有概念の再構築
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15H05385
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
佐久間 寛 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (80726901)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 民族学 / アフリカ地域研究 / 土地制度 / 所有 |
Outline of Annual Research Achievements |
5月、情報収集と研究発表を目的に日本アフリカ学会などに参加した。とくに同学会の公開講演「アフリカの自然と人の共生をめざして」では、ニジェール西部における漁業民と野生動物の関係を主題とする発表を行い、農耕民と土地の関係をめぐるこれまでの研究とは別の切り口から、ただしこれまでの研究と同じく情動の社会的作用に着目して、サハラ南縁地域におけるモラル・エコノミーの様態を論じた。また、その成果をふまえ英語論文を学術誌に投稿した(査読中)。 7月には、昨年度から他の研究者と共同で進めてきたカール・ポランニーの未公刊論集の翻訳事業を完成させ、『経済と自由:文明の転換』という邦題のもと商業出版した。この作業を通じて、本研究計画の理論的柱の一つであるモラル・エコノミー論の深化を図り、その成果を同書の「訳者あとがき」などを通じて一部公開した。 8~9月にかけては、フィールドワークと海外の専門家との研究交流を目的として、ニジェールとフランスに渡航した。とりわけニジェールの首都では調査候補地に関する安全情報を収集し、その結果、同国の農村部における中・長期の住込み調査の実施は現時点では難しいとの見通しを得るに至った。その一方、都市移住民への聞き取り調査を行う過程で、農村部の土地制度を都市部から照らし出すという方法論的な着想を得た。 帰国後、モラル・エコノミー論的観点から西欧近代的所有論を見直すためには、1950~60年代に活躍した第三世界知識人の思想を再評価する作業が有益であるという見通しに基づき、セゼール、サンゴール、ファノンといったアフリカ系知識人が活躍した『プレザンス・アフリケーヌ』誌に関しての文献研究に着手した。その成果は、所属機関の共同利用・共同研究課題の枠内での口頭発表(10月)や、論文「セゼールとモース:脱植民地期の黒人知識人と人類学の対話」(3月)にまとめ、順次公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の柱の一つであるフィールドワークをめぐっては、当初の調査予定地における中・長期的な住込み調査の実施が困難であるという安全上の問題に直面したものの、これに代わる調査地と調査方法についての見通しが得られた。また理論面での研究成果は、口頭発表、論文、翻訳書といった形で順次公表した。以上の理由から上記の区分にあたると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールドワークについては、初年度に得られた見通しに基づき、都市部での聞き取り調査を焦点とした研究に方向性をシフトさせる。また、セネガルをはじめとしたニジェール以外のサハラ南縁地域への渡航も検討する。理論面では、初年度に取組んだ、(1)動物-人間関係論、(2)ポランニー研究、(3)1950~60年代アフリカ系知識人の思想研究を深化させるとともに、英語・仏語論文の投稿や国際会議における口頭発表といった国外に向けた成果発信の方法を拡充させる。
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Research Products
(9 results)