2017 Fiscal Year Annual Research Report
取引相手を通じた輸出企業の持続的成長メカニズム:税関取引データによる分析
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15H05392
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
杉田 洋一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (20743719)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は二つある。第一に、企業間の取引について、その頻度や取引相手・財・価格・数量の変化を、長期間にわたって広範囲の製造業について観察できる、世界的にも希少な墨米企業間貿易取引データセットを作成する。第二に、そのデータセットを用いて、(課題1)取引相手企業を通じた輸出企業の成長メカニズムと(課題2)取引環境の不確実性が長期的貿易取引関係に与える影響を明らかにする。第一の目的に関しては平成28年度末までにほぼ完成している。平成29年度は、研究課題を分析するための推定手法の開発と追加的なデータの整備を行った。さらに論文[1]を学会で報告し、国際雑誌へ投稿中である。 本研究の特色は、因果関係を明らかにするために、メキシコ=アメリカ貿易に生じた外生的ショックを自然実験として用いることにある。(課題1)を分析するために、取引相手を外生的に変えるショックを用いる。平成29年度は、そのような外生的なショックとして、リーマン危機によるアメリカ企業の倒産に着目し、そのデータを整備した。(課題2)では、取引環境の不確実性を外生的に増加させたショックとして、メキシコ麻薬抗争を分析する。メキシコ各地で2006年から頻発する麻薬抗争は、輸送の不確実性を増加させ、抗争地域だけでなく安全地域からの輸出も阻害した可能性がある。平成29年度は、メキシコ道路網ネットワークモデルを作成し、そのモデルを用いた構造推定の手法を開発した。 [1] Yoichi Sugita, Kensuke Teshima, and Enrique Seira. (2017) “Assortative Matching of Exporters and Importers.”
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
企業間取引データを用いる既存研究と比べた本研究の特色は、自然実験を用いた因果関係の推定を行うことにある。企業間取引は、最小単位であっても買い手と売り手という、複数の企業の意思決定の結果であり、個々の観察される変数の関係は非線形的な関係になることが多い。このような非線形モデルで、操作変数法などの因果推論の手法を用いるには、個別の問題ごとに独自の手法を開発しなければならない。平成29年度は、この手法の開発に時間がかかり、研究に遅れが生じた。幸い推計手法の開発は平成29年度末に完了したため、平成30年度の開始から、課題の分析を行うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるので、研究課題の分析の完了に集中する。複数のリサーチアシスタントを雇用することで、効率的に分析を行う。研究成果を論文にし、国際雑誌への投稿を目指す。 各課題の具体的な研究の方針は以下のようになる。 (課題1):どのようなアメリカ企業と取引することがメキシコ企業を成長させるかを分析するためには、取引相手を外生的に変えるショックが必要である。そのような外生的なショックとして、リーマン危機時の取引相手の変化を用いる。(課題2): 取引環境の不確実性を外生的に増加させたショックとして、メキシコ麻薬抗争を分析する。平成29年度に開発した手法を用いて、麻薬抗争による輸送の不確実性の増加が、メキシコ輸出を阻害した効果を推定する。
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Research Products
(2 results)