2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05403
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
田中 伸 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70508465)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コミュニケーション理論 / 社会科教育 / 主権者教育 / シティズンシップ / ニクラス・ルーマン / 学習環境 / 市民性教育 / 子どもの社会認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コミュニケーション理論に基づく社会科教育論の構築を目指すものである。目的は、第1に教師(教科書)の考える「理想の社会像」を前提とする学習ではなく、「子どもの社会認識に 基づく社会」を分析/検証/活用する社会科教育内容の開発すること、第2に授業を、子ども・教師・学級集 団の相互作用システムが働く場と捉え、3者が機能する教育方法の開発(教育・学習方法の研究) である。上記2点を通して、社会科教育における新しい授業研究のモデルを究明し、子どもの社 会認識を利用/活用する、「コミュニケーション理論に基づく社会科教育論」の構築を目指すものである。 本年度は、上記を次の2段階で進めた。第1は子どもの社会認識調査を行い、「理想の社会像」に対する社会科教育の内容や教師の考え方が前提としている教育内容と、子どもの社会認識の関係を調査・分析した。第2は、第1の成果を踏まえ、子どもの社会認識を利用/活用する学習内容・学習方法を開発・実践した。 上記方法に基づき、本年度は主にコミュニケーション理論に基づく社会科教育論の仮説構築を試みた。コミュニケーション理論に基づく社会科論は、様々な社会事象の構築性を一旦認めた上で、その承認過程、それが社会で実際に運用・機能している実態、及びそれと自身の関係を捉えることを目指す。教育内容は現実に機能・運用されている社会や社会事象・文化事象、子ども自身が持つ社会像やその文化的文脈であり、教育方法は対話的実践に基づく交渉である。これらの特質を整理し、以下の論文にまとめた。拙稿「コミュニケーション理論に基づく社会科教育論ー『社会と折り合いをつける力』の育成を目指した授業デザインー」『社会科研究』全国社会科教育学会、第83号、2015、pp.1-12。(査読あり)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、科研のテーマに基づく論文として、以下2点を公刊した。拙稿「コミュニケーション理論に基づく社会科教育論ー『社会と折り合いをつける力』の育成を目指した授業デザインー」『社会科研究』全国社会科教育学会、第83号、2015、pp.1-12。(査読あり)。拙稿, History Learning as Citizenship Education; Collaborative Learning based on Luhmann's Theory of Communication, The Journal of Social Studies Education, The International Social Studies Association, Vo.5, 2016,pp.57-70.(査読なし)。これらでは、コミュニケーション理論に基づく社会科教育論の仮説を構築し、その検証を行った。初年時ではあるが、研究テーマの軸となる仮説を広く発表し、学会の中で検証したことは、大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、主に以下4点に取り組む予定である。 第1は、前年度に引き続き、コミュニケーション理論を活用した先駆的なプロジェクトおよび実践モデルの収集、分析を行う。 政治学習から消費者教育を含めた主権者育成論を基盤とした事例に焦点を広げ、米国における当該授業の論理構成を分析する。 第2は、米国を訪問し、子どもの社会認識を利用した主権者教育論に関する教材・実践例というの調査・収集を行う。また、可能であれば米国の中等学校にてアンケート調査を実施し、子供達が持つ社会認識を調査する。また、実施されている授業を見学・収集し、学習環境の作り方を調査・分析する。 第3は、日本国内の初等中等学校を対象に、モデル的にコミュニケーション理論に基づく社会科授業を実践し、子どもの認識調査及びインタビューを合わせて実施/分析し、本学習論の効果を検証する。 第4は、(1)から(3)の分析・実践結果及び日米社会科教科書の分析をもとに、コミュニケーションに基づく学習論を教育内容・教育方法の観点から整理する。
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Research Products
(6 results)