2016 Fiscal Year Annual Research Report
極限ナノ物質の複合化による新奇創発量子物性の誘起とその応用
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15H05408
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮内 雄平 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10451791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / アップコンバージョン発光 / バイオイメージング / 原子層物質 / 人工積層構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、カーボンナノチューブ、グラフェン、原子層状半導体に代表される極限的に「細い、薄い」ナノ物質の人工的複合化により、ナノ物質固有の物性を凌駕する圧倒的に優れた創発量子物性を発現させ、その応用学理を開拓することである。本研究において、前年度までにカーボンナノチューブを1次元-0次元複合化することで「アップコンバージョン発光」と呼ばれる特異な発光現象が新たに生じることが見出されたことを受け、28年度は、アップコンバージョン発光が利用できることの利点が大きいと考えられる近赤外深部組織バイオイメージングへの応用に向けた研究を開始し、実際に、マウス生体組織に1次元-0次元複合カーボンナノチューブを導入し、ナノチューブのアップコンバージョン発光イメージングが可能であることを実証することができた。実験では、期待通り、アップコンバージョン発光イメージングにおいては生体組織からの自家蛍光のほとんどない極めてコントラストの良いイメージングが可能であることが明らかとなった。また、次の展開に向けて、イメージングだけでなく、光学スペクトルの測定についても行うことができる光学系を新たに整備した。もう1つの研究対象物質系である原子層ナノ物質の人工積層構造における新奇創発物性については、原子層物質上に原子層物質を位置決めをして積層構造を作製し、人工積層構造を対象に温度可変条件下で光物性及び輸送特性の計測を行うことができる実験系の整備、並びに、前年度までに見出されていた異種の原子層物質の重ね合わせにより出現した新たな発光ピークの起源に関する研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、上記のとおり、擬1次元カーボンナノチューブ中に0次元様の状態を有する0次元-1次元複合化カーボンナノチューブにおいて、当初予想していなかった新たな光現象「アップコンバージョン発光」の発現を見いだし、さらに、そのバイオイメージング応用に向けて、実際のマウス生体組織に導入されたカーボンナノチューブのアップコンバージョン発光イメージングと分光計測を行い、自家蛍光の影響が極めて少ない高コントラスト発光イメージングが可能であることが明らかとなっている。アップコンバージョン発光現象の創発は当初計画には無かったものであるが、明らかにナノチューブ固有の物性を凌駕する、しかも実用上有用な光機能の創発という本研究のコンセプトに極めて良く合致するものであることから、昨年度に引き続き、本年度も本研究の中心的課題と位置付けて研究を進めた。この点については、当初の予想以上の成果が出ていると考えている。一方、原子層ナノ物質の人工積層構造については、いくつかの試料の作製に成功し、光学スペクトルの測定結果の考察を行うところまで来ている。これらの状況から、進展状況を、おおむね順調、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、前年度に引き続き、27年度に見いだされた新たな光機能「アップコンバージョン発光」の研究を推進していく予定である。こちらについては、生体イメージングへの応用を目指して、前年度の研究をスケールアップし、アップコンバージョン発光を用いたマウス全体の深部血管造影が可能であることを実証する予定である。0次元-1次元複合化カーボンナノチューブに関する当初計画以上のインパクトが期待されることから、最終年度は上記研究にある程度の研究資源を集中する予定である。原子層物質の複合構造については、すでに確立した積層構造作製技術を用いて、温度可変条件下で光物性及び輸送特性の測定を進めていくことで、引き続き、創発的物性変調・新物性発現の探索を行う予定である。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Tuning of the photoluminescence and up-conversion photoluminescence properties of single-walled carbon nanotubes by chemical functionalization2016
Author(s)
Y. Maeda, S. Minami, Y. Takehana, J-S. Dang, S. Aota, K. Matsuda, Y. Miyauchi, M. Yamada, M. Suzuki, R-S. Zhao, X. Zhaod, S. Nagase
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Journal Title
Nanoscale
Volume: 8
Pages: 16916-16921
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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