2017 Fiscal Year Annual Research Report
Magnetic domain wall motion induced by electric field
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15H05419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 知弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60707537)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 磁壁 / 磁性の電界制御 / スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、電界による保磁力変化の符号反転に関する詳細な研究を行った。磁性の電界効果は強磁性体/ゲート絶縁膜の界面電子状態に敏感であるため、磁性変調の符号は様々な原因で変化する。本研究では、試料としてプラチナ(Pt)/コバルト(Co)積層構造にゲート絶縁膜および電極を取り付けたキャパシタ構造を有するデバイスを作製した。この試料を用いて電界下における保磁力を測定した結果、保磁力変化の符号が強磁性薄膜の厚さが異なる2つの試料で逆になっていることを発見した。一般に保磁力は系の磁気異方性と関連していると考えられているため、同じ試料を用いて磁気異方性に対する電界効果を調べたところ、その変化方向および変化量は同じであった。磁気異方性は界面電子状態をより直接的に反映した量であることを考えると、2つの試料では似たような電子状態変化を示していると考えられる。従って、保磁力変化の符号反転には別の原因がある。それを調べるために、磁気光学カー顕微鏡を用いて電界印加下における磁化過程の直接観察を行った。その結果、磁壁移動が支配的な場合とニュークリエーションが支配的な場合で保磁力の変化方向が異なることが明らかになった。磁壁移動の場合は電界による磁壁移動速度の変調が変化方向を決めているのに対して、ニュークリエーションの場合は局所的な磁区生成の起こりやすさがそれを決めていることがわかった。本研究成果はPhysical Review B誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では無磁場下での単一磁壁駆動を最終の目的としており、それを実現するため磁性の電界制御における物理メカニズムを一つ一つ明らかにしていくことは必須である。保磁力変化の符号反転を通して磁性の電界制御が磁化過程にも強く依存していることを証明した点は、メカニズムを理解する上で重要な成果であると考えられるため、おおむね順調に進展しているといえる。一方、磁壁移動に対しる電界効果がいまだに非常に小さい点が今後解決すべき課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
強磁性体の膜構造の最適化を行う。特に、磁壁移動に影響する界面ジャロシンスキー・守谷相互作用(DMI)を電界で大きく変えられるような膜構造を検討する。
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Research Products
(9 results)