2016 Fiscal Year Annual Research Report
An establishment of new technique to observe ultra-high energy cosmic rays with new-type fluorescence telescopes
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15H05443
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 俊博 東京大学, 宇宙線研究所, 特別研究員 (50706877)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙線観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代の大型の極高エネルギー宇宙線観測実験を目指した開発研究として、直径1.6 mの複合鏡と焦点面に4本の20 cm の光電子増倍管を設置した低コスト型の新型大気蛍光望遠鏡を製作した。すでに宇宙線の定常観測を実施している米国ユタ州にあるテレスコープアレイ実験の観測サイトに、望遠鏡を収納するための建屋とコンクリートパッドの建設を始め、2016年10月に新型大気蛍光望遠鏡を設置した。そして、データ収集用回路を設置し、テレスコープアレイ実験の大気蛍光望遠鏡からの外部トリガーと同期したデータ収集による観測を開始した。 新型大気蛍光望遠鏡とデータ収集回路の統合試験として、望遠鏡の前の紫外線LED光源を光らせ、全てのPMTに信号が検出されるかを試験した。また、21 km先で30分ごとに垂直射出される紫外線レーザー光源の検出にも成功した。この信号は21 km先に19.5乗電子ボルトの宇宙線が到来した時に期待される信号に相当するため、宇宙線の信号に対しても新型大気蛍光望遠鏡が感度を持つことを確かめた。シミュレーションに新型大気蛍光望遠鏡を実装し、紫外線レーザー光源から期待される信号を計算し、実際の測定データとの比較を進めている。 2016年10月から2017年3月までの新型大気蛍光望遠鏡の観測により、累計128時間の観測時間を達成した。その測定データから、極高エネルギー宇宙線が大気中で発する大気蛍光の候補事象を探査した。その結果、18事象の極高エネルギー宇宙線からの大気蛍光発光の事象を発見した。 これらの研究成果についてはテレスコープアレイ実験およびピエールオージェ観測所の共同研究者会議や、国内の物理学会、国際会議で報告され、大気蛍光望遠鏡の専門家らとの議論を深めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代の開発研究となる低コスト型の新型大気蛍光望遠鏡を米国ユタ州のテレスコープアレイ実験へ設置し、実際に極高エネルギー宇宙線が観測することができた。さらには日本からの遠隔操作を実施できる環境を整え、実際に遠隔操作による観測が達成できたことは当初の計画以上に進んでいる点である。また、データ解析へむけ、シミュレーションに新型大気蛍光望遠鏡の鏡や光電子増倍管の配置情報を実装し、遠方の紫外線垂直レーザーから期待される信号を計算し、測定データとの比較も進展している。 さらには、春と秋の日本物理学会での講演や、国際会議での発表、そしてテレスコープアレイ実験やピエールオージェ観測所の共同研究者会議での発表を通して、多くの専門家らとの議論を進め、研究を進めている。 望遠鏡の建屋とコンクリートパッドの建設が遅れ、加えて輸送時の関税の手続きでの遅延により新型大気蛍光望遠鏡が平成28年度には1基しか設置できず、観測事象数が減ってしまったことが課題として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、テレスコープアレイ実験の現場責任者であるJohn N Mattews 特任教授と週1回の定例会議を開催し、観測状況の確認を定期的に実施している。さらに月に1度の共同研究者全体の電話会議により、密な連携によって迅速に研究計画を進め、安定したデータ取得を継続する。また、テレスコープアレイ実験およびピエールオージェ観測所の共同研究者会議や国内外の研究会で発表し、専門家らとの議論を通じて、目的の早期発見および解決に努める。
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Research Products
(7 results)