2015 Fiscal Year Annual Research Report
超高分解能原子核乾板による暗黒物質方向探索実験プロジェクトの推進
Project/Area Number |
15H05446
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中 竜大 名古屋大学, 高等研究院(現), 助教 (00608888)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 方向感度 / 超微粒子原子核乾板 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新たな検出法として注目される方向感度を持った暗黒物質探索実験を目的としたものであり、独自に開発した超高分解能原子核乾板(Nano Imaging Tracker:NIT)を用いた大質量化可能な実験を推進することを目的とする。 当該年度において、国際共同プロジェクトとして組織体制を構築し、デバイス開発から実装システムまでのあらゆる開発研究を進める体制を整えることができた。まず、内部背景事象の理解を目的に、グランサッソ研究所と共同で、ICP-MSおよびGe検出器による検出器内部の放射性同位体、およびAMSを用いたC-14レベルの定量的理解、さらに、それらのデータをもとに内部発生中性子によるバックグラウンドレートの推定を行い、背景事象削減に向けた数値目標を設定することができた。また、解析システムを原理実証用から実際の実験において実装可能なものにアップグレードさせ、その検出性能の理解および性能評価手法の開発を行い、実際の実験にむけた要素技術開発がほぼ確立した。並行して、検出器のナノスケール構造を考慮した新たなシミュレーションの開発も進め、検出効率や角度分解能を含めた検出性能の理解を劇的に進めることができた。このシミュレーションをベースにした、より現実的な暗黒物質探索感度推定、さらに暗黒物質望遠鏡としての将来的な可能性に関する研究を継続して進めている。また、検出器の純化や地下実験サイトの設計と構築などを進めており、平成28年度は予備実験として地上での小スケールランによる背景事象の理解を徹底的に進めていくための準備を進めている。これらの研究成果等踏まえ、Letter of Intentを国際共同プロジェクト"NEWS"としてイタリア・グランサッソ研究所へ提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、計画していた内部バックグラウンドの理解を定量的に進めるとともに、新たな解析システムの開発による性能向上と、解析手法の開発が進み、実装可能なシステム開発が進んだ。システム構築は、やや当初予定よりも遅れてしまったが、全体として概ね計画通り進んでいる。さらに、より短期的な実装を目指した研究と並行して、長期的な研究開発も行い、検出原理の現象論的理解や温度依存性を用いた全く新しいバックグラウンド除去法など重要な研究テーマの創出も行うことができ、これらを国際共同実験として推進することができるような体制も構築された。これらは当初の計画を概ね達成している状況にあると共に、当初予定していなかった新たな知見やアイディアなども生まれ、今後のさらなる発展可能性を示すことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、新解析システムが実装可能な状況にあり、これを用いた本格的な事象解析を進め、大統計でのシグナルおよびバックグラウンド特性の理解を定量的に進めていく。特に、中性子反跳事象を用いた検出器性能評価方法の開発、電子バックグラウンド評価、および、地上ラン体制の完備を進め、最初の小スケールの地上ランを実施し、背景事象の理解と本実験に向けたデモンストレーションを進めるとともに、イタリア・グランサッソ研究所における地下実験に向けた環境構築を進めていく。平行して、デバイスの純化、さらに合成ポリマーを用いた超低バックグラウンドデバイスの基礎研究や、より高度な解析による背景事象の除去開発も進め、物理探索感度をより高めるための研究開発を継続して進めていく。さらに、シミュレーションによる背景事象および検出性能、さらには、方向感度を持った暗黒物質探索における物理的な可能性を理論研究者らを巻き込んで進めていく。
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Research Products
(29 results)