2016 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導量子ビットと光の間の量子インターフェイスの実現
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15H05461
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇佐見 康二 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (90500116)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子インターフェイス / 強磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、冷却原子で実現された常磁性スピン集団やナノメカニクスと光やマイクロ波等の電磁波との相互作用の研究を有機的・建設的に融合し、磁気秩序を持った強磁性スピン系を用いてマイクロ波ー光変換を実現することである。将来的には、この変換機構を希釈冷凍機内の極低温下で動作する超伝導量子ビットと通信波長帯の光との量子的なインター不フェイスとして活用することを念頭に置いている。
強磁性体内に励起される強磁性静磁波モードと光とは、ファラデー効果を介したパラメトリック過程(スピンラマン過程)で非共鳴に結合させる。一方、マイクロ波とは、マイクロ波空洞共振器内の磁場の最大点に強磁性体を設置することで、磁気双極子相互作用により強磁性静磁波モードは共鳴的に結合する。
H27年度には、マイクロ波-光間の双方向的でコヒーレントな変換を、強磁性体であるイッテリウム鉄ガーネット(YIG)の球状試料を介して実証した。また、その変換効率が、強磁性静磁波モードと光との間の結合の弱さで律速されていることを見出した。H28年度は、その増強を目指し以下の2つの研究項目を実施した。1)磁性体球自体を光のウィスパリングギャラリーモード共振器として利用し、強磁性静磁波モードと共振器光モードとの相互作用の研究2)YIG薄膜上にマイクロ波で励起する静磁波モードと気体原子集団のスピンを磁気双極子相互作用で結合させ、その気体原子集団のスピンにのった静磁波モードの情報を光で読み出す新たなスキームを構想し、実験に向けた準備。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H28年度の目的であった光共振器を導入する計画がうまくいき、共振器の助けを借りて電磁波とスピンの相互作用を増強しスピンを電磁波で制御することを目指す『共振器オプトマグノニクス』という新しい研究領域の開拓につながった。
光共振器として球状試料の縁を周回するウィスパリングギャラリーモード(WGM)を利用したが、このWGMと静磁波モードとの相互作用が非相反性を示すことも見出した。WGM、静磁波モードともにスピン角運動量だけでなく(一般には)軌道角運動量も持つことから、静磁波モードによるWGMの散乱過程は、軌道角運動量の保存も考慮する必要があり、新規で興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、H28年度に花開いた『共振器オプトマグノニクス』の研究をさらに推進する。特に、静磁波モードが一般に保持する軌道角運動量という新しい自由度に着目した研究を実施する。
また、Rb原子気体とYIG薄膜との間での磁気双極子相互作用を介したスピンの交換を、実験的に検証する。マイクロ波はYIG薄膜上のマグノンと、光はRb原子気体の持つスピンとそれぞれ強く結合することを利用し、上記のYIG-Rb結合を介すことで、マイクロ波ー光変換の実現を目指す。
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Research Products
(3 results)