2015 Fiscal Year Annual Research Report
2次元流体膜で覆われたミクロ3次元粘性流体における相挙動の解明
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15H05463
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
柳澤 実穂 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50555802)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 粘弾性 / 膜界面 / 拡散 / 混み合い |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはごく最近、高粘性な高分子溶液を脂質膜で覆うと、高分子の拡散速度が低下する現象や、相分離後の濃度場が熱平衡状態に到達しないことを示す実験結果を得た。この過程で、高粘性な高分子溶液を脂質膜で覆うと、分子の混み合いが顕著化して粘弾性的となりエルゴード性が破れる、という仮説に至った。本研究では、高濃度の高分子溶液を閉じ込めたリン脂質膜小胞(ベシクル)における高分子拡散・膜界面揺らぎ・相分離緩和過程などの解析を通し、膜界面と高分子の相互作用が生み出す非平衡現象を解明することを目的とした。 本目的を達成するため、今年度は以下の2項目の実現において成果を上げた。 (1)リン脂質膜で覆われたピコリットル量の高分子液滴における分子拡散:ベシクルと同じくリン脂質膜で覆われた高分子ミクロ液滴に対し、本予算にて購入した共焦点レーザー顕微鏡を用い、蛍光相関分光法による高分子の拡散を解析した。液滴サイズや液滴表面の物性に応じて、高分子の拡散速度が変化することを見出した。 (2)サイズの揃ったベシクルの大量作成法の確立:高分子の拡散が閉じ込めサイズの影響を強く受けることが上記(1)で示唆されたため、ベシクルをサイズ制御しながら大量作成する新規手法を考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究計画に記載した通り、脂質膜で覆われた微小空間に閉じ込められた高分子溶液の拡散について成果を挙げた。ピコリットル量の高分子溶液を脂質膜で覆ったミクロ液滴に対し、内部の溶液粘度を本予算にて購入した共焦点レーザー顕微鏡を用いて、溶液内に分散させたマーカー分子の拡散係数から求めた。液滴サイズがある臨界サイズ以下となると、高分子溶液の粘度がミリリットル量のバルク粘度と一致しなくなることが示唆された。このことをより詳細に解析するため、サイズの揃ったベシクルを大量作製する手法を考案した。高分子溶液を細長いガラスキャピラリーに封入し、リン脂質を溶解させた油中に吐出させることで、サイズの揃ったミクロ液滴を大量作成することに成功した。また、キャピラリー先端径を介してミクロ液滴の大きさを制御可能であることも確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成27年度に作成したサイズの揃った高分子ミクロ液滴から、ベシクルを大量作成する手法を確立する。具体的には、液滴通過法と呼ばれる、ミクロ液滴を油水界面に形成されたリン脂質膜で覆うことでベシクルを作製する手法を用いる。得られたベシクルを用いて、ベシクルサイズや高分子サイズ、膜内外の粘度差などを変数とする実験から高分子の拡散過程を解析し、エルゴード性の破れが起こる条件を見出す。さらに、光照射により膜界面の揺らぎを増幅させて、揺らぐ膜が高分子や膜自身の分子拡散へ及ぼす影響を明らかにする。
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Research Products
(5 results)