2016 Fiscal Year Annual Research Report
反応性超分子フレームワーク:反応場の構築と反応の可視化
Project/Area Number |
15H05480
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
近藤 美欧 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (20619168)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 錯体化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体中の金属酵素では、反応点となる金属錯体の周りに存在する反応場の構造・性質が高効率・高選択な物質変換反応の進行に重要な役割を果たすことが知られている。本申請課題では、相補的相互作用サイトを有する触媒ユニットを自己集積させることで、反応性超分子フレームワークを構築する。得られたフレームワークの結晶内空間と反応サイトを利用し、新規物質変換反応場の構築並びに反応の可視化が可能な錯体プラットフォームの創製を目指す。 本年度においては、触媒サイトとしてRh二核錯体部位を、分子間相互作用サイトとして広いπ共役系と光捕集能を有するnaphthalimide部位を有する分子性触媒をユニットとして用いた。そして、この触媒ユニットの自己集積化を行ったところ、内部に反応場として機能しうる空間を有する超分子フレームワークが得られた。また、フレームワークの構造はnaphthalimide部位間の非共有結合性相互作用により安定化されていることが明らかになった。得られた超分子フレームワークの触媒能の調査を行ったところ、光化学反応条件下で水素発生反応を促進する光触媒材料として機能することが明らかになった。更に、詳細な触媒能の解析の結果から、この材料が非常に高い耐久性・並びに再利用性を有していることも判明した。また電気化学測定・分光化学測定に基づく触媒反応機構解析を実施し、naphthalimide部位の励起状態がRh(II)二核錯体部位により酸化的に消光されることで触媒反応の鍵中間体が生成し、光水素発生反応が進行することを示唆する結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、前年度までの研究により確立された相補的相互作用導入による超分子フレームワーク構築手法に基づき新たな触媒ユニットの設計・合成を行い、得られた触媒ユニットを自己集積化させることで超分子フレームワークの構築に成功した。更に、超分子フレームワークの光触媒能についても詳細に検討を行い、高安定性・高再利用性を有する結晶性の触媒材料を得ることができた。これらの成果は、分子レベルでの高設計性・高規則性を有する結晶材料中に活性点を自在導入可能な、新奇触媒群の創製へと繋がるものである。従って研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究により、活性中心として機能する触媒部位と分子間相互作用部位として機能する分子コネクタ部位とを連結した分子性触媒モジュールの自己集合により構築される「フレームワーク触媒」の創製が達成されたと考えている。そこで今後は、フレームワーク触媒の構造を最適化することで、更に高い機能を有する触媒材料の開発につなげていきたい。具体的には、空孔のサイズ・性質が触媒反応へ与える影響を検討し、同一の構造を持つ触媒点の反応性を反応場の構造のみによって制御することを試みる。このような反応性の制御はすなわち触媒反応における反応速度の自在制御を意味する。よって、反応の高速化によっては(a) 触媒分子の高活性化による高効率な物質変換反応場の創製を、反応の低速化を利用することでは(b) 反応中間体の安定化による触媒反応の可視化が可能となると考えられる。
|
Research Products
(12 results)