2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05481
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 知久 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (70625467)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己組織化 / ペプチド / 配位結合 / フォールディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ペプチドヘリックスを基盤とする結晶性配位ネットワーク(ペプチド結晶とよぶ)の巨大なキラル空間を用いて、生体高分子を認識することを目的としている。多様な構造の生体高分子に対して適したサイズのキラル空間を提供するために、ペプチド結晶の構造バリエーションを増やす試みを進めている。昨年度までに、ペプチド結晶の自己組織化に用いる銀イオンの対アニオンを変更することで、六角柱状のチャネル(2.2ナノメートル径)と四角柱状のチャネル(1.5ナノメートル径)の構築に成功していた。本年度の研究では、トリペプチド配位子の末端への官能基の導入を検討し、官能基間の相互作用によって新しい構造を構築することを目指した。その結果、アミド官能基を有するトリペプチド配位子では、アミド基への種々の相互作用(銀の弱い配位結合と対アニオンの水素結合)が形成されることによって、2.8ナノメートル径の巨大な六角柱状のチャネルが構築できることを明らかにした。これは、生体高分子の代表例である、DNA二重らせん(標準的なB型二重らせんでは、直径2.5ナノメートル程度)も包接できるサイズのナノ空間の構築を達成したといえる。また、ヨウ素を官能基として導入したトリペプチド配位子からは、銀とペプチド配位子から形成する配位ポリマーが無数の結び目となって連なった「poly-knot」構造が得られることも明らかにした。これは、ヨウ素原子と銀イオン間に弱い相互作用が働いたためである。このようなユニークなトポロジー構造の合成例は前例がない。このように、本手法はチャネルの系統的な拡張に留まらず、ユニークなトポロジーをもつナノ構造を構築できることを明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペプチド結晶の構造構築において、次々と新しい展開が生まれており、順調に進展しているといえる。研究開始当初は、2.2ナノメートル径の六角柱状チャネルをもつ1種類のペプチド結晶のみであったのに対し、用いる銀イオンの対アニオンの種類やペプチド配位子末端へ導入した官能基の効果によって、1.5ナノメートル径の四角柱状、および2.8ナノメートル径の六角柱状のチャネルを系統的に構築することに成功している。特に、2.8ナノメートル径のチャネルは、生体高分子の代表例であるDNA二重鎖(標準的なB型二重らせんでは、直径2.5ナノメートル程度)を包接できるサイズであり、ナノ空間の構築という観点では当初の目標に達したといえる。これらの新しく構築したペプチド結晶では、チャネル内表面へ精密にその官能基を配置することにも成功しており、ペプチド結晶のナノチャネルの構造バリエーションを広げる試みが順調に進展しているといえる。また、ペプチド結晶内へのゲスト分子包接の試みも進んでおり、親水性ポリマーの包接とそのX線構造解析の予備的な知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで本研究で構築してきたペプチド結晶を中心に、ペプチド結晶のチャネル内への分子認識を検討する。ホスト骨格であるペプチド結晶のバリエーションと包接させるゲスト分子のバリエーションの双方をスクリーニングし、高い占有率で包接される組み合わせを探索する。ペプチド結晶のバリエーションでは、チャネルの内径および内面の官能基の種類をそれぞれパラメータとして変化させる。包接させるゲスト分子としては、ペプチド類や核酸、糖鎖を始めとする生体高分子に加えて、親水性の合成高分子や抗生物質として用いられる薬剤なども含め幅広く検討する。また、これらのゲスト分子をペプチド配位子の官能基の末端へ結合させ、それを銀イオンと結晶化させることでペプチド結晶のチャネル内へ導入するストラテジーも合わせて進める。ゲスト分子導入後のペプチド結晶のX線構造解析では、鮮明な分子像を観測するために、用いる凍結保護剤や測定温度などを最適化する。
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Research Products
(9 results)