2015 Fiscal Year Annual Research Report
ブロック共重合体の時間構造化を基盤とした動的バイオミメティクスの開拓
Project/Area Number |
15H05495
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
上木 岳士 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子材料ユニット, 主任研究員 (00557415)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己組織化 / ブロック共重合体 / ゲル / 化学振動反応 / 分子機械 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではブロック共重合体(BCP)が形成するnm~μmオーダースケールの三次元秩序に時間軸を加え、この時空間構造利用した二つの分子システムを構築する事を目的としている。1.BZ反応基質カプセル化ベシクルアレイを用いた生体環境で駆動する動的マイクロコンベア 2.自励振動BCPの時空間ナノ相分離を利用したアメーバ運動。 1.に関してはベシクル構造を光架橋によって固定化、BZ反応基質存在下で心筋細胞に膨潤-収縮する中空微粒子を創製した。ベシクル構造のテンプレートにはBCPを構成要素とするものに加えてwater-in-oilエマルジョンの自己集合に基づくコロイドソームも試みた。これら二つの方法論で架橋ベシクルのサイズをコントロールしたところ、単純なサイズ振動のみならず、膜内部への座屈変形が観測される事が明らかになった。高分子が水和に伴いベシクルの接線方向に応力を生じさせ、特徴的な変形挙動を示したと考えられた。 2.に関してはBCPの自律的集合-離散と溶液の物性をシンクロさせることで人工物のみをもってアメーバ運動を模倣する試みである。高分子構造の統計的解析によって、BZ反応の触媒部位を直接高分子鎖に導入する(Direct Polymerization:DP)よりも、活性エステルの形成するアミド結合を介する後修飾(Post Modification:PM)法において双安定温度領域が広がり、より幅広い温度領域で振動現象が観測される事を見いだした。PM法を利用し、自励振動セグメントを線形に連結したABA型トリブロック共重合体による粘性率振動を実現した。分岐型高分子や環状高分子、振動前駆体に高分子の自発的集合構造を利用するなど非線形構造を利用する事で粘性率ベースラインの引き上げや振幅の拡大を狙っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度4月から代表者本人の所属研究機関が変更になった。このため、まずは一連の研究環境を整える事が急務であり、一部研究計画を見直した。一方、計画にできるだけ遅れが出ないよう、申請時の研究機関に所属する研究協力者と緊密に連携を取りながら研究を進めた。結果として、関連する学術論文6報にまとまったことから計画全体としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
ベシクル構造内部へのBZ反応基質の閉じ込めはベシクルのサイズや二重膜部分の厚みを制御する手法を用いる。一方、ブロック共重合体の親水部分として用いてきたPEOを、親水的かつプロトン放出可能な2-acrylamide-2-methylpropane sulfonic acid (AMPS)に切り替えるなどしてBZ反応基質を中空粒子内部に閉じ込めるのではなく、外殻に固定化するという方針も併行する。いずれの研究計画においてもブロック共重合体の分子設計として、これまでには線形にそれぞれの成分が連結されていたものを用いていたが、これを分岐構造や樹状構造、あるいは線形で異なる成分を連結した高分子を用い、振動挙動との相関を確認する。
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