2016 Fiscal Year Annual Research Report
時空間マッピング解析に基づく重合反応系の濃度揺らぎと不均一性の理解・制御
Project/Area Number |
15H05496
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
春藤 淳臣 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40585915)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マイクロレオロジー / 不均一性 / メゾスコピック / ソフトマテリアル / ネットワーク / 固化プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
ソフトマテリアルは、巨視的に流動する液体状態であっても微視的には濃度ゆらぎが存在し、観測時間が系の緩和時間よりも十分に短い場合、すなわち系が固体として振る舞う場合、濃度揺らぎの凍結に起因する不均一性が発現する。本研究では、高分子重合系における濃度揺らぎ・不均一性と生成した高分子の一次構造との相関を正確に理解し、最終的な材料の力学物性を制御することを目的とする。重合過程における局所領域の粘弾性関数を重合系中の空間座標に対してマッピングし、濃度揺らぎ・不均一性を可視化する。とくに、重合の進行に伴い高分子の絡み合いがどのように発展するのか、あるいは高分子がどのように生長するのか明らかにする。平成28年度に実施した具体的な項目と主な研究成果を以下にまとめる。
(1) 昨年度までにセットアップした粒子追跡装置を用いて、超分子ポリマー系の局所物性とその空間分布を評価した。その結果、系は、メゾスコピックスケールにおいて、空間的に不均一であり、その程度は観測する空間スケールに強く依存することを明らかにした。 (2) 超分子ポリマー系のゾルーゲル転移過程(固化プロセス)における不均一性についても検討し、ゲルへの転移過程はメゾスコピックスケールにおける物性の均一化を伴って進行すること、また、ゾルーゲル転移を繰り返すと、均一化に要する時間が増加することを明らかにした。 (3) 重合反応に伴う硬化過程における不均一性の発現についても検討した。その結果、硬化過程において空間的な不均一性が発現すること、ならびに不均一性の長さスケールが硬化反応の進行に伴い減少することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的・実施項目として、初年度に (1) 測定装置の改良とその検証、(2) 局所領域における物性解析、また、次年度以降に、(3) 重合固化過程におけるマッピング解析、(4) 階層的な不均一性の解析、(5) 不均一性と高分子の一次構造との相関の解明を設定した。
平成28年度は当初の計画に従って、実施項目(3) ならびに (4) の一部を実施した。具体的には、重合硬化過程における解析を行い、不均一性の長さスケールが硬化反応の進行に伴い減少することを明らかにした。また、それだけにとどまらず、超分子ポリマー系の固化プロセスは、メゾスコピックスケールにおける物性の均一化を伴って進行すること、ならびに、相転移を繰り返すと、均一化に要する時間が増加することを明らかにした。 研究成果は学術論文や学会にて発表済みであり、その一部は学術論文として投稿準備中である。以上の理由により、おおむね順調に研究が進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度では、固化プロセスにおける不均一性の発現とその特性長さスケールの変化に関する知見が得られた。それを踏まえて、今後、下記を重点的に実施する予定である。 試料中の局所粘度のばらつきを統計的に解析し、系中の空間不均一性に関する情報を抽出する。また、様々なサイズの粒子を用いて検討し、不均一性の長さスケールを評価する。さらには、固化プロセスにおけるマッピング解析に基づき、不均一性とその長さスケールの可視化を検討する。そのためには、広い視野で、小さな粒子の熱運動を三次元的に計測する必要があり、装置の光源や検出系を新たに改良する予定である。 上記の検討に基づき、固化プロセスにおける濃度揺らぎの凍結と不均一性の発現に統一的な解釈を与える。また、最終的に得られた固体材料の力学物性を評価し、階層的な不均一性と材料の巨視的な物性、ひいては機能特性の相関を明らかにする予定である。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] 酸化グラフェンが形成する液晶の階層的不均一性2016
Author(s)
春藤淳臣, 堀耕一郎, Penaloza, P. David, 奥村泰志, 菊池裕嗣, Lee, Kyungeun、Kim, Sang Ouk, 田中敬二
Organizer
平成28年度繊維学会年次大会
Place of Presentation
タワーホール船堀(東京都江戸川区)
Year and Date
2016-06-08 – 2016-06-10
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