2016 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェン量産プロセスの開発と超高強度ナノ複合材料の創製
Project/Area Number |
15H05504
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
荒尾 与史彦 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (40449335)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | グラフェン / ナノ粒子 / 分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度では、高出力超音波や圧力ホモジナイザ、高速撹拌機など、様々な黒鉛剥離装置におけるグラフェンの質と生産量について、検討を行ってきた。その中で、圧力ホモジナイザが最も生産能力が高く、剥離装置としてもっとも性能が高いことを明らかにした。 2016年度では、圧力ホモジナイザを利用した黒鉛の剥離について、溶媒の種類を300種類以上試し、どの溶媒がグラフェンの分散・剥離に有効であるかを検討した。水系の溶媒ではイオン性、非イオン性の界面活性剤を用いた。また有機溶媒では、低沸点のアルコール系や、グラフェンの分散に有効であると報告されているNMPやDMFの溶媒を用いた。さらに有機溶媒を水と混合し、溶媒の表面張力を変化させて剥離処理を行った。 界面活性剤はグラフェンの剥離・分散に有効であるが、解砕処理中にグラフェンへの吸着プロセスが必要となる。そのため、有機溶媒系に比べると、グラフェンの生産能力は半減することが明らかとなった。また、有機溶媒では、水と混合することで、グラフェンの生産能力をさらに高めることが可能となる。これはグラファイトと溶媒の表面張力が一致することで、凝集力を弱めて剥離しやすくなるからであり、従来報告されている結果を再確認した。本研究では、混合する水のpHを変化されることで、生産能力をさらに30%以上高めれることを見出した。このメカニズムとしては、溶媒のpHを変えることで、グラフェンの液中での静電反発力を高めることができ、分散・剥離効率が高まる結果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
様々な剥離処理を行い、最適な剥離装置について提案することができた。また液中プロセスにおける、溶媒についても検討を行うことができ、表面張力と静電反発力をコントロールすることで、グラフェンの生産能力を高めれることを見出した。 装置と溶媒について、いずれもオリジナルなアイデアに基づく世界に先駆けた研究である。論文は質の高いジャーナルであるCarbon誌に3報掲載されている。 以上の理由により、当初の計画以上に研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は超高強度複合材料の作製にチャレンジをする。グラフェンの強度を複合材料として発揮させるには、グラフェンの分散が最も重要なファクターとなる。これまでにグラフェンの利用した複合材料の強度向上に関する研究は100報以上報告されているが、普通に樹脂にグラフェンを混ぜるだけでは強度は低下する。アセトンなどの有機溶媒にグラフェンを予備分散させて、樹脂と混合する溶媒ブレンド法が唯一強度向上につながる作製方法である。しかしながら、アセトン中のグラフェンの分散は悪く、分散も大幅に改善されているとはいえない。予備実験において、界面活性剤の添加やグラフェンの表面処理などを従来の手法を試しているが、分散改善には至っていないのが現状である。そこで本研究では、オリジナルなアイデアでもって、グラフェンをアセトン中で分散させる手法を新しく提案する。 前年度までの高品質グラフェンの量産化技術と、ナノコンポジットの作製技術を融合することで、グラフェン添加率1%以下で、強度倍増を目標とする。
|
Research Products
(6 results)