2016 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ分子線源とMEMS壁面の創製によるラジカル表面反応機構の構築
Project/Area Number |
15H05508
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
齋木 悠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60550499)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 燃焼 / 化学的消炎 / 表面反応 / MEMS / 分子線 |
Outline of Annual Research Achievements |
燃焼器の壁面は,壁への熱損失に起因する熱的消炎効果とともに,壁面でのラジカルの吸着・再結合反応に起因する化学的消炎効果を持つことが知られており,壁面近傍の火炎の安定性を著しく悪化させる.しかし,化学的効果に関しては,ラジカル表面反応の定量測定が難しいことから,その詳細な消炎メカニズムには依然として不明な点が多い.本研究では,プラズマ,分子線,MEMSおよび燃焼診断技術を駆使して,壁面の化学的効果を解明・モデリングすることを目的としている. 本年度は,昨年度までに構築した,非平衡プラズマ発生器を備えた分子線源および超高真空チャンバからなるプラズマ分子線散乱計測装置を用いることで,化学的効果において極めて重要な水素ラジカル(H)の吸着反応過程を石英壁面に対して調査した.本装置は,水素ガス(H2)のプラズマ分解により生成したHラジカルの分子線を壁面に照射し,壁面での散乱・吸着プロセスを経たHを質量分析器で取得することで,その壁面吸着確率の直接的な評価を可能とする.なお,ここでは,十分な強度の散乱信号を得るために,分子線の変調方法として矩形波変調を採用した.測定の結果,一般には不活性と認識されている石英壁面でも水素ラジカルが有為に吸着すること,またその吸着確率は,壁温が30,200,400および600 ℃の条件において,それぞれ0.166,0.164,0.074および0.058となり,低壁温ほど吸着し易いことを初めて定量的に明らかにした.一方,これに併行して,平行平板流路内のメタン・空気予混合燃焼場において2光子吸収LIF測定を行い,壁面近傍におけるHラジカル分布も取得した.今後,分子線実験により異なる材質の壁面における吸着確率を取得し,燃焼場での実験・数値解析データを援用すれば,種々の燃焼器におけるラジカル表面反応モデルの構築が可能になると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の目標は,プラズマ分子線散乱実験により,化学的消炎効果のモデリングにおいて重要な水素および酸素ラジカルの吸着反応過程を,異なる材質の壁面に対して評価することであった.当初は,壁面からの散乱信号強度が弱く,吸着挙動の評価に苦心したものの,分子線の変調方法をパルス変調から矩形波変調に変更し,壁面に照射するラジカルの量を適切に制御することでこの問題を解決した.そして,石英壁面において,水素ラジカルの吸着確率を定量することに初めて成功した.また,分子線実験に併行して,平板流路内燃焼場でのLIF計測を行い,壁面近傍におけるラジカル分布も取得した.燃焼実験の結果は,分子線実験の検証データとして用いる予定である.今後,様々な壁面に対する各ラジカルの吸着確率を調べる必要があり,当該年度の目標に照らしてやや進捗が遅れているものの,既に実験手法を確立できていることから,これからの加速度的な進展が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
分子線散乱実験および燃焼場での数値解析を進めて,化学的消炎効果の解明・モデリングを行う.具体的には,プラズマ分子線散乱法により,アルミナや実用燃焼器で多用されるステンレスおよびインコネルをはじめとした様々な材質の壁面における水素および酸素ラジカルの吸着確率を,壁温も変えながら定量的かつ系統的に明らかにする.そして,これまでに取得した分子線・燃焼実験のデータを集約し,気相での詳細反応機構と壁面での吸着反応を組み入れた燃焼場での数値解析との比較を通じて,化学的効果の詳細反応モデルの構築を行う.さらに,反応機構が単純なメタンのみでなく,冷炎と熱炎による多段酸化プロセスを有するジメチルエーテルなどを対象として,構築した表面反応モデルに基づく数値解析を行い,化学的効果によるラジカルの消失が,着火特性,排出ガス組成などマクロな燃焼特性を悪化させるメカニズムを調査し,種々の燃焼器における壁面の効果を予測可能な解析手法の確立を目指す.
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Research Products
(5 results)