2015 Fiscal Year Annual Research Report
渦流による可燃限界拡張・高速熱伝達現象のメカニズム解明と小型発電システムへの応用
Project/Area Number |
15H05509
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
下栗 大右 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40432687)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 渦流中での限界火炎温度 / レーザー計測 / 小型高出力発電器 / 熱電素子発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,(A)渦流を用いると従来の火炎伝播限界値である「可燃限界」を超えた条件で火炎が伝播可能となる現象に対して,渦中を伝播する火炎先端の温度・化学種(活性種・安定種)濃度・速度分布の測定を行い,いずれの因子が燃焼限界拡張に支配的であるかを特定してその機構を明らかにする.さらに(B)渦流を利用すれば,狭い流路でも乱流に近い壁面熱伝達が達成される現象に対し,ガス温度や被加熱面温度,壁面付近での流速分布を測定して詳細な伝熱解析を行い,渦流による狭小な空間での高速熱伝達機構を明らかにする.同時に,(C)基礎研究の結果を応用し,供給・冷却を完全自立とした「小型渦流燃焼発電システム」を構築し,エネルギー密度1.0 M Wh/m3を目標としてシステム試作・評価を行う. 平成27年度は,(A)レーザー計測により,渦中を伝播する火炎先端の温度・化学種濃度・流速分布の測定を行った.それぞれ,温度と化学種濃度の分布についてはRaman分光計測とOH-LIF法,流速分布についてはPIVを用いて測定を行った.結果,伝播限界付近においては,火炎先端の温度が「限界火炎温度」,すなわち燃焼反応の進行に最低限必要な温度に極めて近い温度をとることが判明した.このことは,渦流中における火炎伝播限界が火炎温度によって支配されていることを示唆している.さらに,(C)「小型渦流燃焼発電システム」の構築について,素子メーカーなどの協力により,予想を上回るペースでの進展があり,マイクロ燃焼器を利用した小型発電器としては,現在世界最高出力の18Wを達成することに成功した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,(A)レーザー計測により,渦中を伝播する火炎先端の温度分布・化学種濃度分布・流速分布の測定を行った.それぞれ,温度と化学種濃度の分布についてはRaman分光計測とOH-LIF法,流速分布についてはPIVを用いて測定を行った.これらレーザー計測については,これまでに得られていた知見を有効に活用することで,予想よりも早い段階でデータを得ることに成功した.結果,伝播限界付近に於いては,火炎先端の温度が「限界火炎温度」,すなわち燃焼反応の進行に最低限必要な温度に極めて近い温度をとることが判明した.このことから,研究開始1年目に於いて,渦流中における火炎伝播限界が火炎温度によって支配されていることを明らかにすることができた. さらに,(C)「小型渦流燃焼発電システム」の構築については,学会での発表を通じて実用燃焼器の開発メーカーや素子メーカーからのコンタクトがあったこと,さらには,他大学の伝熱関連の研究者からの助言も得られたことから,一般企業や他大学の研究者との連携により,予想を上回るペースでの進展があった.研究開始時点では1W程度の出力しか得られていなかったのに対して,18Wという高出力を得ることに成功した.マイクロ燃焼器を利用した小型発電器としては,これまでは10Wが最高出力であったのに対して,本研究の成果により,それを優に上回る現在世界最高出力が得られている.さらに最近では,実用上問題となる一酸化炭素についても評価項目に加え,実験を進めている. 当初,項目(C)の燃焼器による発電は3年目に於いて大きな進展があると予想していたのに反し,1年目から大きな進展を得ることができたと言える.また,更なる高出力化,環境汚染物質抑制のための新技術を提案しており,今後2年間での大きな進捗が見込まれる.
|
Strategy for Future Research Activity |
(A)渦流中における燃焼限界拡張メカニズム解明について,これまでの研究では,Raman分光計測,OH-LIF計測を用いてきたが,Raman分光計測はシングルショットでの測定が不可能であるため,火炎が定在する過濃側の限界付近でしか適用できないこと,OH-LIFはOHが豊富に存在する希薄側でしか適用できないことから,広範囲での計測が困難であった.そこで平成28年度は,これまで用いてきたRaman分光計測やOH-LIF計測に加え,NO-LIFを用いる.これは燃焼前のガスに予め一酸化窒素(NO)を添加しておく方法で,あらゆる燃料濃度条件において温度計測が可能となる.本計測法の適用により,より広当量比条件で火炎先端温度計測を行い,火炎温度が支配要因であることを裏付ける. さらに,(C)小型発電器に関しては,残された大きな課題として,供給・冷却の完全自立,パッケージ化がある.供給は空気・燃料両者に対して自立化を進める必要がある.これらの課題に対しては,平成27年度同様,企業や他研究者の連携を強めて開発を進める. 上記の2点に対して,(B)渦流中による壁面熱伝達促進効果については,進展が得られていない.平成28年度は,渦流中における壁面への熱伝達について詳細に検証を行うべく,広島大学燃焼工学研究室に現有のサーモグラフィーを用い,壁面温度とガス温度測定,さらには,レーザー計測によって得られたガス流速分布から,熱伝達の評価を行う.得られた結果は,小型発電システムの設計へフィードバックする.
|