2016 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ科学とメカトロニクスの融合によるバーチャル分子間相互作用ディスプレイの開発
Project/Area Number |
15H05511
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 隆行 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (00516049)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | バーチャル・カソードディスプレイ / 人工脂質膜 / 窒化シリコン薄膜 / DNA / 界面動電現象 / 電子線 / 細胞内ひずみ分布 / インターカレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜上の特定の領域を標的としたナノ操作を行う方法として,本研究では電子線励起によるバーチャル・カソードによる電気化学および界面動電現象を原理とした手法を提案している.誘電体であるSiN膜 (厚さ100 nm) 上に低加速電子線を走査・帯電させることで任意の位置に仮想的な電極を形成することができる.SiN膜上にはナノサイズの任意の電極パタンが高速に切り替え投影されるので,これをバーチャル・カソードディスプレイと呼び,本年度では本ディスプレイ上の脂質二分子膜やDNAの分子間相互作用の操作や,播種・培養した単一接着細胞の機能解析に応用した. バーチャル・カソード上では,誘電体中における負帯電と固液界面での負極反応が生成されるため,バーチャル・カソード界面付近に高い電界の勾配と高電流密度のパタンを高速に形成できる.このため,イオンや脂質分子は分極や誘電率の差などからくる応力を受け操作できる. 応用の一つとして,細胞内の機械的な結合関係と細胞運動の際に用いる弾性ひずみの分布を可視化した.バーチャル・カソードが生成された特定領域の接着斑のみを脱接着させることで,細胞内の特定の領域に蓄積されていた弾性ひずみエネルギーを解放させて,その過渡応答からひずみ分布が定量化される原理である. 次に,細胞膜へのピンポイントのエレクトロポレーションへの利用が可能であることを示した.エレクトロポレーションは細胞膜と印可電界との幾何学的関係によりtransmembrane potential (TMP) が決定されるため,局所的な穿孔を行うためには電界の集中とその局所化が必要である.本バーチャル・カソードでは任意の場所にこれを形成でき,細胞の任意の位置に半値全幅が <2 μmの膜貫通の物質輸送が生じることを確認した.また,穿孔後の細胞膜の回復がみられ操作後の細胞生存性をタイムラプス観察によって確認できた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞内ひずみ分布の可視化やピンポイント・エレクトロポレーションへの応用だけでなく,界面動電現象の素過程の解明や分子システムの機能操作などの基礎研究が大幅に進んだ. バーチャル・カソードでは局所電場が形成され,電解質中に流れでる電流が周囲のイオン濃度分布の変化と電気機械的作用および界面との相互作用を形成していることが明らかになってきている.このような機序のため,デバイ長さの外側にある細胞膜のエレクトロポレーションが可能となることがわかった. また,人工脂質膜の形状形成,リポソームの変形操作,DNAのインターカレーションにおける分子間相互作用の変化など科学的にも工学的応用にも興味深い現象が多く観察されており,原理・機序と現象の関係性が深く理解できるようになった.これにより,試行錯誤的であった研究方策が予測可能になってきたのが大きな進展のポイントである.
|
Strategy for Future Research Activity |
・DNA分子のインターカレーションや人工脂質膜の分子間相互作用の操作を通じて,生体分子のリアルタイムな機能操作を実現していく, ・画像計測システムとバーチャル・カソードシスプレイの高度な結合により,分子機能のリアルタイム操作を実現する.画像計測信号のリアルタイムフィードバックを用いて,ターゲットである分子機能のダイナミクスを直接操作できるようなシステム構築し,生体分子システムへの動的介入を試みる.
|
Research Products
(17 results)