2016 Fiscal Year Annual Research Report
Microscopic Traffic Flow Theory for Safe and Efficient Intersection Design
| Project/Area Number |
15H05534
|
|---|
| Research Institution | The University of Tokyo |
|---|
Principal Investigator |
井料 美帆 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80469858)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
| Keywords | 交通工学・国土計画 / 利用者挙動 / 交差点 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
まず，過年度に提案したモデルの精査を行った．Jerk最小化による移動軌跡モデルは，転回・加減速の開始・終了時の境界条件を明確に定める必要がある．特に，転回終了時の情報は，将来の状況を予見して与えなければならない．この境界条件の設定について，交差点の実観測データをもとに検討を行った．転回終了時刻や終了時の速度を交差点進入時の速度等の情報から予測するモデルを作成し，転回終了時の情報を所与とせずに移動軌跡を推定する手法を提案した．
ここまでで作成した右左折車両の挙動モデルは，他者との相互作用を考慮しないものであった．横断歩行者との交錯がある場合の右左折車両，および横断歩行者の挙動についても分析を行った．横断歩行者との交錯がある場合には，選択するギャップに合わせたタイミングで右左折車両がコンフリクトポイントを通過するものと仮定し，コンフリクトポイント通過タイミングを流出側の境界条件としてJerk最小化による移動軌跡の導出を試みた．急ブレーキを必要とする状況下ではJerkの変動が大きいため，時間的に余裕を持って設定する希望移動軌跡と個別の歩行者への反応とを組み合わせる必要があることを示した．
また横断歩行者を対象として，横断中に歩行速度が急に変動する要因の分析を行った．歩行者は，歩行者青表示／青点滅表示時間を経験則からある程度知っているという仮定の下，青点滅終了時までに横断を完了するために必要な歩行速度と現在の歩行速度とを比較し，その乖離状況によって速度変化確率が決定されることを示した．この結果をもとに，歩行者の急な加減速イベントを含む横断時の歩行速度変化モデルを構築した．さらに，このモデルと既存の右左折車両挙動モデルとを組み合わせることにより，歩行速度変化の考慮の有無が交差点の安全性評価指標に対して与える影響の感度を明らかにした．
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では，交差点流入部からの連続性を考慮した挙動モデルの改良を行うこととしていた．しかし，提案する挙動モデルの特性から，流出部分の境界条件設定の影響がより大きくなると考えられたため，特に交差点流出部に重点を置いた分析を行った．結果として，転回時の移動軌跡全体を，予見情報なく推定することに成功しており，当初予定通りの進捗といえる．
右左折車両と歩行者との相互回避モデルについては，提案した挙動モデルとギャップアクセプタンスモデルとを組み合わせた拡張により適用できる範囲と，追加のモデルが必要な部分を明らかにしており，十分な進捗があったといえる．歩行者の速度変化についても，速度変化の発生確率とその影響要因を定量化し，速度変化による安全性指標への影響を示しており，計画通りの進捗である．
さらに，海外の研究協力者の協力によりカタール国における車両挙動のデータを取得しており，これまでに実施したニューヨーク市のデータとも合わせて，国内と海外の道路利用者挙動の比較分析が可能な環境にある．
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は，歩行者の速度変動の安全性に対する感度を示したが，実態と比較しての再現性評価までは行っていない．したがって，観測値との比較評価と，必要に応じてモデルの修正・改良を行っていく．
また，信号現示の組合せ，特にある現示から次の現示に切り替わる際の灯火の組合せや，信号表示時間の長さに応じて，利用者の交差点駆け込み挙動が異なることが分かっている．このような制御による時間的制約と近い将来の制御情報の予見に応じた利用者挙動の分析・モデル化が必要である．観測分析を通じ，時間的制約による影響のモデル化と，既存モデルへの統合を行っていく．
|
Research Products
(9 results)
