2015 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性ラン藻における人工転写調節システムの開発とイソプレノイド生産への応用
Project/Area Number |
15H05557
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
蓮沼 誠久 神戸大学, 大学院科学技術イノベーション研究科, 教授 (20529606)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラン藻 / アスタキサンチン / 代謝工学 / メタボローム解析 / カロテノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高密度培養が可能な海洋性ラン藻Synechococcus sp. PCC7002をベースとして,物質生産のための代謝工学ツールを開発し,オミクス技術を活用したラン藻宿主生産系の評価を行い,物質生産への応用を目指している。平成27年度は、ラン藻Synechocystis sp. PCC6803由来psbA2プロモーターの下流にβ-カロテンケトラーゼ遺伝子およびβカロテンヒドロキシラーゼ遺伝子を連結し、S. 7002内生プラスミドpAQ1内のFlankAおよびFlankB配列に相同組換えにより、導入した組換えS. 7002(ZW株)を作出した。培養条件がアスタキサンチン生産に及ぼす影響を調べたところ、光強度95 micro-E、20 mM 硝酸ナトリウム存在下で、3.43 mg/L/dayのアスタキサンチン生産性を示すことが分かり、従来のヘマトコッカス藻を利用したアスタキサンチン生産と同程度(0.86~4.23 mg/L/day)であることが明らかとなった。ZW株のアスタキサンチン生産は増殖と連動し、ヘマトコッカスのように窒素枯渇条件にする必要が無いことから、雑菌汚染のリスクが低いことが分かった。β-カロテンケトラーゼとβ-カロテンヒドロキシラーゼの組合せは、β-カロテンを出発して4段階の酸化還元反応によりアスタキサンチンを生産することから、細胞内全カロテノイド中のアスタキサンチン比率を向上させることを期待したが、面白いことに、全カロテノイド含量が向上していることが明らかとなったため、ZW株ではβ-カロテンの生合成が向上していることが示唆された。一方で、β-カロテンケトラーゼ遺伝子およびβカロテンヒドロキシラーゼ遺伝子がpAQ1内に安定的に保持されないことが明らかとなり、導入遺伝子の構築(プロモーターおよびニュートラルサイト)の見直しが必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、Synechococcus sp. PCC7002へ天然型プロモーターを導入し,培養環境がアスタキサンチン生産へ及ぼす影響を評価し、導入遺伝子の発現量を解析した。また、天然型転写因子遺伝子の過剰発現株を作出しつつ,人工転写因子の設計・構築を行っている。さらに、S. 7002株のメタボローム解析系を開発した。一方で、S. 7002内生のプラスミドであるpAQ1に導入した外来遺伝子(β-カロテンケトラーゼ遺伝子およびβ-カロテンヒドロキシラーゼ遺伝子)が安定に保持されないことが明らかとなり、導入遺伝子の構築の見直しが必要であることが分かった。そこで、現在、プロモーター、ニュートラルサイト、マーカー遺伝子等が導入安定性に及ぼす影響を調べているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、アスタキサンチン生産株のメタボローム解析を実施して、β-カロテンケトラーゼ遺伝子およびβ-カロテンヒドロキシラーゼ遺伝子の導入が細胞内代謝に与える影響を調べる。また、アスタキサンチン生産株において、転写因子発現量を同時強化してアスタキサンチンのさらなる向上を検討する。また、人工プロモーター導入株を作出して、アスタキサンチン生産に及ぼす影響を調べる。
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Research Products
(3 results)