2015 Fiscal Year Annual Research Report
トランスオミクスによる疾患特異的ネットワークの同定と制御
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15H05582
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柚木 克之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70433745)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トランスオミクス / 代謝 / システム生物学 / メタボローム / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
トランスオミクスの概念および方法論、将来の方向性を初めて体系的に定義した総説をTrends in Biotechnology誌にて発表し、同誌4月号の表紙を飾ることができた。当該総説では、個別分子解析、シングルオミクス、トランスオミクスという生命科学の大規模化の流れを概観し、各階層をつなぐ要素技術として利用可能な諸手法やデータベースおよびその利用法、今後手法開発が望まれる課題を紹介した。また、将来の疾患解析への展開可能性を吟味するため、遺伝的疾患マーカーのゲノムワイドな探索法として知られているGWAS(Genome-Wide Association Study; ゲノムワイド関連解析)とトランスオミクスそれぞれの特徴を比較し、GWASとトランスオミクスとの融合による、メカニスティックな疾患解析技術Trans-OWAS(Trans-Ome-Wide Association Study)を提唱した。 また、2014年に刊行したインスリン作用のトランスオミクス解析に関する論文(Yugi et al. "Reconstruction of insulin signal flow from phosphoproteome and metabolome data", Cell Rep. 8:1171-1183, 2014)の成果が知られるようになり、複数の国内研究集会にて招待講演を行う機会に恵まれた。これを本研究の認知度を高める好機ととらえ、トランスオミクスの概念を広めるべく、システム生物学のトップ国際学会であるInternational Conference for Systems Biologyや日本プロテオーム学会でも口頭発表を行った。これらの学会発表に際しては、前記論文の成果を詳説したほか、本研究で得られた予備的な成果についても併せて議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年4月より、ラット肝がん由来Fao細胞を用いて遺伝子発現測定実験を行った結果、予備的に得ていた結果と一致しないデータが得られたため、用いる細胞を含めた実験方法の再検討を迫られた。この検討に要した時間が遅れの主たる原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
4階層のトランスオミクス解析を実現するためのネットワーク再構築手法を確立する。昨年度までに、インスリンによりリン酸化レベルが変動した転写因子の同定、転写因子に至るシグナル伝達経路の同定に係る手法開発が完了しており、転写因子およびそのターゲット遺伝子から成る転写調節モジュールの同定手法にも目処が立っている。今後はこれらの要素技術を統合し、多階層オミクスデータからシームレスにネットワーク再構築を可能にするデータ解析パイプラインを完成させる。 これと並行して、健常マウスおよび2型糖尿病モデルマウスに経口グルコース負荷試験を課して肝臓の時系列サンプルを取得する。取得した肝臓サンプルより、時系列トランスクリプトーム、プロテオーム(リン酸化含む)、メタボロームを計測する。計測した多階層オミクスデータは上記のデータ解析パイプラインに入力し、健常マウスおよび2型糖尿病モデルマウスそれぞれの多階層ネットワークを再構築する。さらに、両者のネットワークを比較し、「疾患特異的ネットワーク」の特定を試みる。
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Research Products
(7 results)