2017 Fiscal Year Annual Research Report
送粉共生が駆動した花香多様化の分子基盤:迅速アッセイ系を用いた実験的解明
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15H05604
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
奥山 雄大 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40522529)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 花香分析 / 比較ゲノム解析 / 送粉者 / ジメチルジスルフィド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から花香成分に著しい多様性が見られることが明らかになったカンアオイ属について花香成分の分析を進め、日本産の大部分の種を網羅する花香プロファイルのリストをさらに充実させた。また、昨年度に引き続きトクノシマカンアオイ、ハツシマアオイ、タニムラアオイ、フジノカンアオイ、アサトカンアオイについて送粉調査を行った。これらの送粉調査の一部については論文としてまとめた(Kakishima and Okuyama, 2018)。 また、カンアオイ属でジメチルジスルフィド生合成のメカニズムを解明すべく、花に基質と考えられる物質を吸わせ、実際に花香放出プロファイルの変化が起きるかを検証する実験手法を確立した。これによりカンアオイ属の花組織内でのジメチルジスルフィド生合成基質を特定した。 一方、これまでの研究から花香プロファイルの変化が種分化に大きな役割を果たしたと考えられるチャルメルソウ属については、特定した4つの花香生合成遺伝子が実際に種分化に関与した可能性を進化遺伝学的に検証した。具体的には、特にこの種分化モデルがよく当てはまる姉妹種コチャルメルソウとチャルメルソウの2種間について、これらの遺伝子に分断化淘汰が働いた痕跡を、ゲノム平均からの4遺伝子の分化係数(Fst)のずれから検証した。この結果、少なくとも3つの花香生合成遺伝子に種分化の際分断化淘汰が働いた証拠を得て、両種の種分化の際には花香の分化が引き金となったという仮説の検証に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンアオイ属、チャルメルソウ属の双方について、花香遺伝子が種の多様化に果たした役割が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
カンアオイ属の花香プロファイルの多様性とその送粉様式の多様性との関係、ジメチルジスルフィド生合成のメカニズム解明、チャルメルソウ属の種分化における花香生合成遺伝子の関与についてそれぞれ論文としてまとめ公表する。
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Research Products
(8 results)