2016 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミックなヒストン複合体形成による植物転写制御メカニズムの解析
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15H05640
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤原 すみれ 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (50532131)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子発現制御 / 転写制御 / 転写抑制因子 / ヒストン / 植物 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
移動の自由を持たない植物は、絶妙かつダイナミックに各種遺伝子の発現を制御することで、日々の激しい環境変動に適応しながら生きている。転写因子はそのような発現の制御(転写制御)を行うタンパク質であり、発現をONにする転写活性化因子とOFFにする転写抑制因子が存在するとされている。遺伝子発現制御機構の解明により、有用植物の開発や基礎研究の大幅な効率化が期待できる。そのためには、転写制御機構の解明、特に植物特有で未解明な点の多い転写抑制因子の作用機構を解明する必要がある。 我々はこれまでに、植物特有の転写抑制因子による転写の抑制機構にヒストンやその関連因子等を含む複合体が関与する可能性を見出した。そこで本研究では、これらの発見をもとに、ヒストンやその関連因子等の複数のタンパク質によってダイナミックに制御されていると考えられる転写抑制機構を明らかにすることを目指している。 平成27年度途中で都合により事業を中断し、当該年度(平成28年度)の途中から再開した。当該年度には、前年度に引き続き、転写抑制に関与する可能性を見出した各種因子の機能欠損が転写抑制因子の働きに与える影響の解析や、各種解析に必要な植物材料の整備、各種因子間の関係について解析を行った。また、新たに、転写抑制因子との相互作用が検出されないにも関わらず転写抑制に関与する可能性のある因子群を見出した。これらの因子の機能欠損株では、転写抑制因子の働きが弱まるケースと強まるケースがあることを発見した。また、これらの機能欠損による影響の有無は転写抑制因子によって異なることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
都合により前年度に事業を中断し、平成28年度の途中から再開した。当初予定していた植物材料(多重変異体や形質転換体等)の作製等や各種解析を予定通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見をもとに、順次整備を進めてきた植物材料等を利用してより具体的に検証を進め、これまでに得た候補因子がどのように転写制御機構に関わるのかさらに検証していく。 具体的には、各種因子の修飾や量の変化が転写抑制機構や植物の形質、転写抑制ターゲット領域への結合などに与える影響などを解析する。また、各因子間の関係についても解析を行う。 各因子間の関係を検証する生化学的解析においては、解析対象の多くが非特異的にレジン等に結合するなどの問題があり、慎重に条件検討しながら解析を進める必要がある。また、これまでに単離している多くの因子について、完全に機能を失うと植物が致死となることから、致死にならない程度に機能を抑えた系統を利用したり、トランジエントアッセイなどの手法を活用したりすることで機能検証を進めていく。
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