2016 Fiscal Year Annual Research Report
シアリダーゼの局所イメージング新技術を利用したインフルエンザNA研究の新展開
Project/Area Number |
15H05644
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
高橋 忠伸 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (20405145)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シアリダーゼ / インフルエンザウイルス / パラミクソウイルス / ノイラミニダーゼ / イメージング / 薬剤耐性 / 単離 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
水に不溶性の蛍光物質であるベンゾチアゾリルフェノール誘導体(BTP3)にシアル酸(N-アセチルノイラミン酸、Neu5Ac)を付加したシアリダーゼ蛍光イメージング剤「BTP3-Neu5Ac」を開発してきた。BTP3-Neu5Acは、シアリダーゼ活性を介してインフルエンザA型およびB型ウイルスや一部のパラミクソウイルス(センダイウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス)の感染細胞を蛍光イメージングする。生きた状態で感染細胞を蛍光可視化することで、ウイルス株を単離できる。本研究はシアリダーゼ活性の蛍光イメージング技術を利用して、ウイルスシアリダーゼ活性の機能解析と抗インフルエンザ薬(シアリダーゼ阻害剤)の耐性化検出法の開発および耐性化機構の解析を目的とする。 抗インフルエンザ薬(シアリダーゼ阻害剤)に耐性化したインフルエンザA型ウイルスと薬剤感受性ウイルス株を混合感染させた細胞において、薬剤耐性ウイルス感染細胞を選択的に蛍光イメージングし、薬剤耐性株を高効率に単離する方法を報告した。各薬剤に対する耐性化変異を導入したシアリダーゼ発現細胞においても、各薬剤に対する耐性化を選択的に蛍光イメージングできた。薬剤耐性化変異を導入したシアリダーゼ発現細胞を選択的に蛍光イメージングする方法を確立した。また、シアリダーゼ活性のシアル酸分子種に対する基質特異性を簡便に測定する蛍光基質により、ウマとヒトのインフルエンザA型ウイルスのシアリダーゼの基質特異性を迅速に測定する方法を確立した。ネイティブのシアリダーゼがホモ四量体であることから、バキュロウイルスタンパク質発現システムを使用して、四量体化シグナルを挿入した分泌型シアリダーゼタンパク質四量体を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
抗インフルエンザ薬(シアリダーゼ阻害剤)とBTP3-Neu5Acを同時に反応させることで、薬剤耐性インフルエンザウイルスと感受性ウイルスを混合感染させた細胞から、薬剤耐性ウイルス感染細胞を選択的に蛍光イメージングできた。さらに蛍光化細胞から単離したウイルス株の遺伝子を抽出し、シアリダーゼ遺伝子の薬剤耐性変異を検出することで、薬剤耐性ウイルス株を高効率に単離できることが分かった。特定の抗インフルエンザ薬に耐性化する既知変異を導入したシアリダーゼ遺伝子を哺乳動物細胞に発現させた。別々の薬剤に対して、各薬剤の耐性化シアリダーゼ発現細胞を選択的に蛍光イメージングすることができた。これらの結果を論文や総説で報告した。 シアリダーゼ活性を簡便迅速に蛍光検出する技術確立の一環として、シアル酸分子種に対する基質特異性を簡便に測定できる方法を確立した。ウマインフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスのシアリダーゼ活性において、シアル酸分子種に対する基質特異性が異なることを明らかにし、論文に報告した。 バキュロウイルスタンパク質発現システムにより酵素活性を有する分泌型シアリダーゼを生産することに成功した。さらに四量体化シグナルを挿入し、ネイティブのシアリダーゼと同様なホモ四量体構造を有する分泌タンパク質として生産できるようにした。しかし、四量体化シアリダーゼの生産量は、実験に適用するには十分ではなかった。 上記のように研究方策が多岐にわたってきたが、各方策ともに進展している。また、論文や総説として成果を報告できたことから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
バキュロウイルスタンパク質発現システムにより生産した、エンドサイトーシスシグナルと四量体化シグナルを挿入した分泌型シアリダーゼを利用して、ウイルスの細胞侵入過程を疑似的に再現させ、エンドサイトーシス過程におけるpHの低下に依存してシアリダーゼ活性がどこまで維持されるのかを解析する。バキュロウイルスタンパク質発現システムによるシアリダーゼの生産量が少なく実験への適用性が困難なため、酵母発現系を利用したシアリダーゼ生産システムを確立する。 シアリダーゼ蛍光イメージング剤BTP3-Neu5Acの高性能化や応用法の確立を行う。本研究では、ウイルス感染におけるシアリダーゼ活性の機能解明を一つの目的としているので、感染細胞内のシアリダーゼ活性の測定法を確立し、解析する。また、もう一つの目的である、インフルンザウイルスの薬剤耐性化機構の解明について、シアリダーゼ活性の蛍光イメージング法を利用して効率的な解析を進める。高性能化させたイメージング剤を使用して、バキュロウイルスタンパク質発現システムにより生産したシアリダーゼタンパク質を添加した細胞やウイルス感染細胞の細胞内のシアリダーゼ活性の局在性を高精度に解析する。 シアリダーゼ活性の蛍光化研究として、インフルエンザウイルスのシアリダーゼ活性のシアル酸分子種に対する基質特異性を簡便迅速に測定する方法を確立した。今後、多くのウイルスのシアリダーゼ活性の基質特異性を測定することで、シアル酸分子種に対する基質特異性の視点から感染機構を解明する。
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Remarks |
新聞報道:「耐性ウイルス判別試薬販売 インフルエンザ 県立大などが研究」朝日新聞(静岡版)、p. 20、2016年4月7日(木)朝刊;「インフル紫外線で確認 広島国際大チーム ウイルス反応試薬」中国新聞、2016年5月9日(月) 研究代表者の受賞:一般財団法人 バイオインダストリー協会 2016年度化学・生物素材研究開発奨励賞
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Research Products
(65 results)
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[Journal Article] Rapid regulation of sialidase activity in response to neural activity and sialic acid removal during memory processing in rat hippocampus.2017
Author(s)
Akira Minami, Yuko Meguro, Sayaka Ishibashi, Ami Ishii, Mako Shiratori, Saki Sai, Yuuki Horii, Hirotaka Shimizu, Hokuto Fukumoto, Sumika Shimba, Risa Taguchi, Tadanobu Takahashi, Tadamune Otsubo, Kiyoshi Ikeda and Takashi Suzuki.
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 292
Pages: 5645-5654
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Substrate specificity of equine and human influenza A virus sialidase to molecular species of sialic acid.2016
Author(s)
Tadanobu Takahashi, Saori Unuma, Sawako Kawagishi, Yuuki Kurebayashi, Maiko Takano, Hiroki Yoshino, Akira Minami, Takashi Yamanaka, Tadamune Otsubo, Kiyoshi Ikeda, Takashi Suzuki.
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Journal Title
Biol. Pharm. Bull.
Volume: 39
Pages: 1728-1733
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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