2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05657
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新 幸二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (60546787)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Th17細胞 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
Th17細胞は、IL-17を高産生するヘルパーT細胞の一種であり、通常飼育下のマウスでは腸管粘膜固有層に多く存在している。Th17細胞は細胞外寄生細菌や真菌の感染防御に重要な細胞であるが、一方で過剰な活性化が自己免疫疾患の発症につながることが示唆されており適切な制御が必要である。我々はこれまで、マウス腸内常在細菌であるセグメント細菌が腸管Th17細胞の誘導・活性化に必須の役割を担っていることを明らかにしてきたが、ヒト腸内にセグメント細菌と同等の細菌が存在しているかはまだよくわかっていない。そこで本研究では、ヒト腸内に存在する細菌の中から腸管Th17細胞を誘導する細菌種の単離・同定を目的とした。 昨年度はヒト腸内細菌の中で潰瘍性大腸炎患者の便からTh17細胞を誘導する細菌20菌株を単離した。本年度はこの20菌株のTh17細胞誘導メカニズムの解明と同時に小腸Th17細胞誘導細菌の単離および他の免疫細胞誘導細菌の同定を試みた。Th17細胞誘導20菌株によるTh17細胞誘導メカニズムについては、20菌株定着マウスの大腸上皮細胞の遺伝子発現を解析し、Nos2やDuoxなどの発現が著明に増加することを突き止めた。マウスTh17細胞誘導細菌であるセグメント細菌も上皮でのNos2やDuoxなどの発現上昇を引き起こすことから、同様のメカニズムが関与している可能性が高いことが想定された。小腸Th17細胞誘導細菌については、ヒト小腸バイオプシーサンプルを無菌マウスに投与して誘導細菌を探索したが現時点ではまだ小腸Th17細胞の誘導が確認できるサンプルは見つかっていない。また、同時並行で進めている実験において、Th17と同様に炎症性腸疾患の発症に関与しているとされるTh1細胞の誘導細菌をクローン病患者の唾液から同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に潰瘍性大腸炎患者の便からTh17細胞を誘導する細菌20菌株を単離したが、本年度はそのTh17細胞誘導メカニズムの解明を主に行った。まず、マウスでのTh17細胞誘導細菌であるセグメント細菌(SFB)と同様に腸管上皮細胞への強い接着が20菌株によるTh17細胞にも関与しているかを検討するため、20菌株定着マウスの腸管組織を走査電子顕微鏡 (SEM)により観察した。その結果、SFBと同様に上皮へ強く接着している様子が観察できた。そこで次に腸管上皮細胞へどのような刺激が入っているかを解析するため、20菌株定着マウスの大腸上皮細胞を単離しRT-PCRにより遺伝子発現を解析した。その結果、SFB定着マウスの小腸上皮細胞と同様にNos2やDuoxの発現が著明に増加していることがわかった。このことからSFBによるTh17細胞誘導細菌と同様の誘導メカニズムが関与していることが想定されたため、現在Saa1, Saa2, Saa3トリプル欠損マウスを作成し、血清アミロイドの関与を検討しているところである。しかし、まだメカニズムの特定には至っていない。一方、この20菌株は主に大腸Th17細胞を誘導し小腸ではあまり強いTh17細胞の誘導は確認できない。そこで、小腸Th17細胞誘導細菌が他にいるのではないかと考え、ヒト小腸バイオプシーサンプルを無菌マウスに投与して誘導細菌を探索した。しかしながら現時点ではまだ小腸Th17細胞の誘導が確認できるサンプルは見つかっていないため、今後も継続して探索を続ける予定である。また、現在、腸内細菌のdysbiosisに口腔細菌の関与が疑われているため、口腔細菌の中で腸管に定着し免疫系に強い影響を与える細菌を探索したところ、Th1細胞を強く誘導する細菌をクローン病患者の唾液から同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したTh17細胞誘導細菌がどのようなメカニズムでTh17細胞の誘導を促進しているかを明らかにするため、以下の手順で研究を進める。 1.同定したTh17細胞誘導20菌株細菌とTh17細胞を誘導しない細菌からゲノムを精製し、次世代シークエンサーでゲノム解読を行う。Th17細胞誘導細菌と誘導しない細菌を無菌マウスに定着させ、大腸内容物または盲腸内容物から細菌由来のDNAおよびRNAを抽出し、メタゲノム解析、メタトランスクリプトーム解析を行う。また同時に大腸内容物または盲腸内容物からメタボローム解析を行う。以上の解析を統合して、Th17誘導細菌が特異的に生成している物質、産生している物質を同定する。 2.上の解析により同定された候補因子をin vivo、in vitro両方からTh17細胞誘導に関与しているか解析する。In vivoではTh17細胞を誘導しない細菌を定着させたマウスに候補因子を投与することでTh17細胞が誘導されるかを検討する。In vitroではヒトのT細胞株またはマウスのT細胞の培養中に候補因子を添加することでTh17細胞の誘導が促進されるか検討を行う。 3.Th17細胞誘導細菌が炎症性疾患の発症に関与しているのかを、様々なモデルマウスを用いて検証する。 4.一方で現在同定しているTh17細胞誘導細菌は小腸粘膜固有層にはほとんど影響を与えない。これは、マウスにおけるセグメント細菌とは異なる性質であり、ヒトにおいても小腸粘膜固有層のTh17細胞を誘導する腸内細菌が存在していると考えている。そこで、可能であれば小腸バイオプシーサンプルを無菌マウスに投与することにより、小腸粘膜固有層のTh17細胞を誘導する細菌を同定したい。 5.新たに同定したTh1細胞誘導細菌についても、Th17細胞誘導細菌と同様に誘導メカニズムの解明を行う。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] A subpopulation of high IL-21-producing CD4(+) T cells in Peyer's Patches is induced by the microbiota and regulates germinal centers.2016
Author(s)
Jones L, Ho WQ, Ying S, Ramakrishna L, Srinivasan KG, Yurieva M, Ng WP, Subramaniam S, Hamadee NH, Joseph S, Dolpady J, Atarashi K, Honda K, Zolezzi F, Poidinger M, Lafaille JJ, Curotto de Lafaille MA.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 30784
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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