2015 Fiscal Year Annual Research Report
脂質メディエーターを介した癌と宿主の相互作用による乳癌の浸潤・転移機序の解明
Project/Area Number |
15H05676
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
永橋 昌幸 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30743918)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂質メディエーター / スフィンゴシン-1-リン酸 / スフィンゴシンキナーゼ / 癌と宿主 / リンパ節転移 / 乳癌 / 血管新生 / リンパ管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌においては、リンパ行性進展を介したリンパ節転移は最も重要な予後規定因子の1つである。申請者は「癌で産生された脂質メディエーター・スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)がリンパ管新生を促進する」ことを解明してきた。しかし、生体内においては癌微小環境で産生されるS1Pも存在し、癌と宿主側の相互作用におけるS1Pの生理的機能はいまだ不明である。申請者らは「癌で産生されたS1Pが、リンパ管内皮細胞のS1P産生責任酵素を活性化し、さらにオートクライン・パラクライン効果で癌の浸潤・転移能を促進している」という仮説を立て、本研究を企画した。本研究の目的は「S1P産生責任酵素の遺伝子改変マウスや臨床検体を駆使し、癌と宿主の相互作用におけるS1Pの生理的機能とその臨床的意義を明らかにすること」である。平成27年度は、遺伝子編集ツールであるCRISPR/Cas9システムを用いて、SphK1およびSphK2のノックアウト(KO)乳癌細胞をC57BL/6マウス由来の乳癌細胞株を用いて確立した。また、ES細胞を用いてC57BL/6マウス単独系統のSphK1およびSphK2KOマウスを作製し、同種同一系統の癌移植モデルを確立した。これによって、移植癌細胞に対する拒絶反応を完全に排除し、SphK1、SphK2とS1Pの癌浸潤・転移における役割を解析することが可能となった。また、乳癌手術症例47例を対象とした研究を行い、乳癌原発巣におけるスフィンゴシンキナーゼの発現や活性化、組織中S1P濃度、患者の臨床病理学的データとの関連について検証を行った。その結果、乳癌原発巣におけるSphK1の発現とS1P濃度は相関すること、原発巣のS1P濃度が高いとリンパ節転移の頻度が高くなることを発見した。さらに、動物実験と手術検体を用いて、独自の方法によって癌間質液中のS1Pの濃度測定を行う方法を確立した。これらの成果を国際学会で発表し、論文としてまとめ、複数の科学雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は主に課題研究AとBについて研究を行い、計画通りに進行している。以下に進捗状況の詳細を記載する。 課題研究A 癌と宿主の相互作用におけるS1Pの生理的機能:平成27年度は、遺伝子編集ツールであるCRISPR/Cas9システムを用いて、SphK1およびSphK2のKO細胞を乳癌細胞株で確立した。これによって、癌細胞の増殖能、遊走能、生存能などにおけるSphK1およびSphK2の細胞機能における働きを細胞実験で検証することが可能となった。また、ES細胞を用いてC57BL/6マウス単独系統のSphK1およびSphK2KOマウスを作製し、同種同一系統の癌移植モデルを作製した。このモデルでは移植癌細胞に対する拒絶反応を完全に排除し、S1P産生酵素であるSphK1、SphK2とS1Pの癌浸潤・転移における役割を解析することが可能となった。 課題研究B スフィンゴシンキナーゼ1型(SphK1)およびS1Pのリンパ管浸潤・リンパ節転移への関与と臨床的意義:平成27年度は、乳癌手術症例47例を対象とした研究を行い、凍結組織標本・ホルマリン固定標本を用いて、スフィンゴシンキナーゼの発現や活性化、組織中S1P濃度、S1P受容体およびS1P輸送体の発現レベルを分析し、患者の臨床病理学的データ、薬剤感受性、治療成績との関連について検証を行った。その結果、組織のSphK1の発現とS1P濃度は相関すること、S1P濃度が高いとリンパ節転移の頻度が高くなることを発見した。さらに、動物実験と手術検体を用いて、独自の方法によって癌間質液中のS1Pの濃度測定を行う方法を確立した。これらの成果を国際学会で発表し、論文としてまとめ、複数の科学雑誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は主に課題研究AとBについて研究を継続し、課題研究Cについても研究を開始する。 課題研究A 癌と宿主の相互作用におけるS1Pの生理的機能:CRISPR/Cas9システムを用いて、SphK1およびSphK2のKO乳癌細胞株を用いて、癌細胞の増殖能、遊走能、生存能などにおけるSphK1およびSphK2の細胞機能における働きを細胞実験で検証する。これらの細胞をC57BL/6マウスに移植することで、癌細胞のSphK1/K2が産生するS1Pの役割について解析する。また、ES細胞を用いて作製したC57BL/6マウス単独系統のSphK1およびSphK2KOマウスに対し、野生型、SphK1およびSphK2KO乳癌細胞を移植し、宿主側のSphK1/2によって産生されるS1P、および癌と宿主の産生するS1Pの相互作用の役割について解析する。さらに、上記KOマウスを作製したFloxマウスと掛け合わせることで、リンパ管特異的SphK1/2ダブルKOマウスを作成し、リンパ管が産生するS1Pの癌転移における役割について解析することを目指す。 課題研究B スフィンゴシンキナーゼ1型(SphK1)およびS1Pのリンパ管浸潤・リンパ節転移への関与と臨床的意義:平成28年度は、既に論文投稿中野乳癌手術症例47例の結果に加えて、さらに追加解析症例50例に関して、凍結組織標本・ホルマリン固定標本に加えて、血液検体を用いて、スフィンゴシンキナーゼの発現や活性化、組織中S1P濃度、S1P受容体およびS1P輸送体の発現レベルを分析し、患者の臨床病理学的データ、薬剤感受性、治療成績との関連について検証する。 課題研究C S1Pの癌代謝動態および生存能への関与と、癌と宿主とに対するS1P標的治療の効果:SphK1およびS1Pの癌代謝動態、癌細胞生存能への関与について解明する。平成28年度は、課題研究Aで作成した細胞株を用いて、スフィンゴシンキナーゼとS1Pとにより制御される癌代謝動態と抗癌剤耐性との関連について、各種抗癌剤における耐性能を調べる研究を推進する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Sphingosine-1-phosphate phosphatase 2 promotes disruption of mucosal integrity, and contributes to ulcerative colitis in mice and humans2016
Author(s)
Wei-Ching Huang, Jie Liang, Masayuki Nagahashi, Dorit Avni, Akimitsu Yamada, Michael Maceyka, Aaron R. Wolen, Tomasz Kordula, Sheldon Milstien, Kazuaki Takabe, Tamas Oravecz, Sarah Spiegel
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Journal Title
The FASEB Journal
Volume: 未定
Pages: 未定
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Targeting sphingosine-1-phosphate in obesity-induced angiogenesis in breast cancer progression2016
Author(s)
Masayuki Nagahashi, Kazuki Moro, Junko Tsuchida, Toshiyuki Niwano, Kumiko Tatsuda, Chie Toshikawa, Miki Hasegawa, Yu Koyama, Takashi Kobayashi, Shin-ichi Kosugi, Hitoshi Kameyama, Akimitsu Yamada, Tomoyoshi Aoyagi, Kazuaki Takabe, Toshifumi Wakai
Organizer
The 11th Annual Academic Surgical Congress
Place of Presentation
Jacksonville, USA
Year and Date
2016-02-02 – 2016-02-04
Int'l Joint Research
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[Presentation] Very Long Acyl Chain (C24:0 and C22:0) Ceramides are Associated with Obesity and Breast Cancer Progression2016
Author(s)
Kazuki Moro, Masayuki Nagahashi, Junko Tsuchida, Toshiyuki Niwano, Kumiko Tatsuda, Chie Toshikawa, Miki Hasegawa, Yu Koyama, Takashi Kobayashi, Shin-ichi Kosugi, Hitoshi Kameyama, Hiroaki Aoki, Kazuaki Takabe, Toshifumi Wakai
Organizer
The 11th Annual Academic Surgical Congress
Place of Presentation
Jacksonville, USA
Year and Date
2016-02-02 – 2016-02-04
Int'l Joint Research
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