2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05697
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大越 慎一 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (10280801)
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Project Period (FY) |
2015 – 2019
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Keywords | 相転移 / 電磁波 / 物性化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、従来では実現できなかったような光・電磁波に応答する相転移物質を創成し、次世代デバイスや環境・エネルギー問題に資する新機能性に関する研究を推進することを目的としている。今回は、反転対称の破れた結晶構造を有するイプシロン型酸化鉄(ε-Fe_2O_3)に対してレーザー光を照射し、出射される高調波の温度・波長依存性を調べることにより、光-磁気相関現象である磁化誘起第二高調波発生の観測に成功した。また、サブミクロンサイズ(0.1~1μm)のε-Fe_2O_3棒磁石の合成に成功し、原子間力顕微鏡と磁気力顕微鏡を用いて、単磁区構造を有していることを明らかにした。これは、単磁区構造を有するサブミクロンサイズのハードフェライト磁石の初めての例である。ε-Fe_2O_3棒磁石は、強磁性のみならず強誘電性を合わせ持つマルチフェロイック物質であることを明らかにした。さらに、ε-Fe_2O_3棒磁石を樹脂中に磁場配向させ固定したフィルムを作製し、フェライト棒磁石でできた光波長変換フィルムを開発した。このフィルムは、磁化誘起第二高調波発生を示し、磁性を利用して光波長変換を制御できる新しい非線形光学材料である。また、ε-Fe_2O_3棒磁石の結晶a軸方向からの光照射により、可視光領域でファラデー効果が観測されることを見出した。THz時間領域分光法を用いたキッテルモードマグノンスペクトル測定では、光学フォノンモード周波数(2.62THz)の1/14の大きさにも達するキッテルモードマグノン共鳴周波数181GHz(0.181THz)を観測した。第一原理計算より、この共鳴周波数は、ε-Fe_2O_3棒磁石の大きな結晶磁気異方性に起因していることを明らかにした。また、金属置換量の微細な調整により、磁気記録に適した3kOeの保磁力およびε-Fe_2O_3と比べ44%磁化が向上した金属置換型イプシロン-酸化鉄ε-Ga_<0.31>Ti_<0.05>Co_<0.05>Fe_<1.59>O_3磁性粉の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
反転対称の破れた結晶構造を有するε-Fe_2O_3において、光-磁気相関現象である磁化誘起第二高調波発生を室温で観測することに成功した。また、反転対称の破れた結晶構造を有するサブミクロンサイズのε-Fe_2O_3棒磁石の合成にも成功し、単磁区構造を有するハードフェライト磁石であることを見出した。ε-Fe_2O_3の磁区構造に関する知見は、磁気記録材料への展開を図る上で重要である。さらに、ε-Fe_2O_3磁石を樹脂中に分散させた光波長変換フィルムの開発に成功し、磁化誘起第二高調波発生、ファラデー効果を示すだけでなく、181GHzという非常に高いキッテルモードマグノンの共鳴周波数を示すことを見出した。本物質が磁気分極・電気分極を併せ持ち、光・電磁波に応答する新しい相転移物質であることを、実測および理論の両面から明らかにしたことは大きな進展である。ε-Fe_2O_3の金属置換体ε-Ga_<0.31>Ti_<0.05>Co_<0.05>Fe_<1.59>O_3を合成し、磁気記録に適した3kOeの保磁力およびε-Fe_2O_3と比べ44%の磁化の向上を達成した。これらの特性は、次世代アーカイブ用磁気記録に求められる性能であり、今後の応用展開が期待される。これまでの研究期間内にε-Fe_2O_3に関連して、25件もの特許出願を行っている。なお、ε-Fe_2O_3は、英国立科学博物館(サイエンスミュージアムロンドン)にて2016年7月より展示され、世界的に注目されている。また、国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2017)では、ε-Fe_2O_3に関して高い評価を受け「ナノテク大賞産学連携賞」を受賞し、産業界からも注目されている。加えて、nano tech 2017では、ラムダ型五酸化三チタンの研究も評価され、"熱エネルギーを保持する蓄熱セラミックスの開発"が、「平成28年度文科省秀でた利用6大成果賞」を受賞している。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン伝導性を示す金属錯体の合成を行い、その物性評価を行う。光・電磁波を用いた分光研究を推進し、電磁波と物質の相関を調べる。また、有機配位子の導入を行うことにより、誘電性を有する金属錯体を合成し、その誘電特性を評価する。中心対称性が破れた物質は磁気分極と電気分極を有しているため、磁場や電場により粒子を配向させることができると考えられるため、母材に分散した粒子を磁場や電場中で乾固させることにより、配向した膜の作製も行う。本研究課題の一つであるミリ波材料学を構築するため、磁気異方性の大きな磁性物質の開発を推進する。 種々の電気的機能性を付与した電荷移動型三次元ネットワーク金属錯体を合成し、室温で光電荷移動型相転移を引き起こすことで、ドラスティックな色相変化などの光スイッチングを測定する。また、第一原理計算および分子軌道法を用いて、電子構造を明らかにし、結晶磁気異方性の起源を調べる。磁気ヒステリシスの再現は、平均場近似を行い、結晶磁気異方性に対する熱的ゆらぎを考慮することによって検討する。さらに、理論計算により、金属置換などによる磁性体の色調変化を予想し、様々な色調の磁性体を設計する。 研究代表者により開発された優れた磁気特性を有する金属酸化物およびその金属置換体において、マグノン緩和過程を調べる。k=0のコヒーレントマグノンを励起した後、その緩和過程を測定する。粒子サイズ、金属置換による緩和時間の変化を調べ、緩和過程を明らかにする。また、粒子同士の結晶方向を揃えた材料を作製し、平行励起によるマグノン発生と緩和過程も測定する。加えて、テラヘルツ領域の光吸収効率や直線偏光を円偏光に変換する性能の向上を目指す。
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Research Products
(103 results)
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[Journal Article] Phonon-mode calculation, Far-and Mid-infrared, and Raman spectra of an ε-Ga_0.5Fe_1.5O_3 magnet2017
Author(s)
S. Ohkoshi, M. Yoshikiyo, Y. Umeta, M. Komine, R. Fujiwara, H. Tokoro, K. Chiba, T. Soejima, A. Namai, Y. Miyamoto, T. Nasu
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Journal Title
J. Phys. Chem. C
Volume: 121
Pages: 5812-5819
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Multimetal-substituted epsilon-iron oxide ε-Ga_0.31Ti_0.05Co_0.05Fe_1.59O_3 for next-generation magnetic recording tape in the big data era2016
Author(s)
S. Ohkoshi, A. Namai, M. Yoshikiyo, K. Imoto, K. Tamasaki, K. Matsuno, O. Inoue, T. Ide, K. Masada, M. Goto, T. Yoshida and T. Miyazaki
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Journal Title
Angew. Chem. Int. Ed.
Volume: 55
Pages: 11403-11406
DOI
Peer Reviewed
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