2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05714
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永沼 章 東北大学, 薬学研究科, 教授 (80155952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黄 基旭 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (00344680)
外山 喬士 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50720918)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | メチル水銀 / トキシコロジー / 転写調節 / シグナル伝達 / オートクライン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は網羅的スクリーニングによってメチル水銀毒性増強作用を有する細胞内因子として転写因子様蛋白質HOXB13(今後、本蛋白質を我々はtmRT1と呼ぶ)を同定し、メチル水銀によってtmRT1を介して合成誘導され細胞外に放出されるTNFαなどの細胞障害性因子が細胞毒性を発揮していることを明らかにした。本現象の機構を解明するために、本年度はまずHEK293細胞中でのtmRT1の分布を検討したところ、メチル水銀処理の有無にかかわらず大部分のtmRT1が核内に存在することが判明した。メチル水銀はtmRT1のmRNAレベルにはほとんど影響を与えることなくtmRT1の蛋白質レベルを増加させたことから、tmRT1の分解を抑制している可能性が示唆された。TNF-αプロモーター領域へのtmRT1の結合を調べたところ、通常時のtmRT1はTNF-αプロモーター領域にごく僅かしか結合していないが、メチル水銀処理によってそのレベルは著しく増加した。このことからtmRT1は転写因子として機能しており、メチル水銀はその活性を上昇させると考えられる。TNF-αプロモーター領域の遺伝子配列とリコンビナントtmRT1を試験管内で反応させたところ、メチル水銀処理によってtmRT1のTNF-αプロモーター領域への結合レベルが増加した。したがって、tmRT1にメチル水銀が直接結合することによってTNF-αプロモーター領域への結合レベルが増加する可能性が考えられる。一方、TNF-αとTNF受容体との結合を阻害する薬剤がメチル水銀毒性を顕著に抑制することから、TNF受容体を1つずつ調べたところTNF受容体3(TNFR3)のみがノックダウンによって細胞のメチル水銀感受性を低下させた。この結果は、細胞外に放出されたTNF-αがTNFR3と結合してそのシグナルを細胞内に伝えている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスへのメチル水銀投与が脳組織特異的にTNF-αの発現を誘導することから、本研究課題はメチル水銀が示す脳選択的毒性の発現機構を解明するうえでの突破口となり得る重要なものと考えられる。本年度は細胞を用いた検討により、tmRT1がTNF-αプロモーター領域に結合すること、そしてその結合がメチル水銀処理によって著しく増加することを明らかにすると共に、試験管内反応によってメチル水銀が直接tmRT1に作用してTNF-αプロモーター領域への結合を促進させることを明らかにすることができた。また、tmRT1構造中の中央部分がこの結合のみならずtmRT1が示す増殖抑制作用にも関与していることが示唆された。TNF-αによるメチル水銀毒性増強に関与するTNF受容体分子種も特定することができた。以上のように今後本研究を推進していくうえで貴重な知見を得ることができたことから、本研究は計画に従って「概ね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.メチル水銀によるtmRT1の活性化機構:tmRT1とメチル水銀が直接結合する可能性が示されたことから、tmRT1中のメチル水銀結合部位を特定すると共にその結合がtmRT1のTNF-αプロモーター領域への結合を促進させる機構を検討する。また、試験管内反応によってtmRT1とメチル水銀が直接結合する可能性が示されたものの、細胞内ではメチル水銀が他の蛋白質のtmRT1への結合も促進させている可能性を否定できない。そこで、メチル水銀存在時および非存在時にtmRT1と結合する蛋白質を検索する。 2.メチル水銀によるtmRT1を介したTNF-α発現誘導機構の解明:培養細胞を用いて次の検討を行う。(1)メチル水銀によってtmRT1の細胞内レベルが増加する現象の機構解明とその意義、(2)tmRT1の高発現がTNF-αの遺伝子発現に与える影響、(3)メチル水銀によるtmRT1を介したTNF-α発現誘導に関わるプロモーター領域の特定、および(4)メチル水銀によるtmRT1を介したTNF-α発現誘導に関わる補因子の同定と作用機構解明(1の検討と一部重複)。 3.メチル水銀によって細胞外に大量に放出されたTNF-αが細胞機能に与える影響(シグナル伝達):メチル水銀は細胞外のTNF-α濃度を数百倍以上も上昇させる。TNF-αによるメチル水銀毒性増強に関与するTNF受容体分子種がTNFR3であることが判明したことから、メチル水銀によるTNF-α/ TNFR3を介した細胞増殖抑制に関与するシグナル伝達系を明らかにすると共にその機構を検討する。
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Research Products
(19 results)