2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism for toxic effect of methylmercury
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15H05714
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永沼 章 東北大学, 薬学研究科, 名誉教授 (80155952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黄 基旭 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (00344680)
外山 喬士 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50720918)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | メチル水銀 / トキシコロジー / 転写調節 / シグナル伝達 / オートクライン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はメチル水銀毒性に影響を与える遺伝子を網羅的にスクリーニングした結果、メチル水銀毒性増強作用を有する細胞内因子として転写因子様蛋白質tmRT1を同定し、メチル水銀によってtmRT1を介して合成誘導され細胞外に放出されるTNFαなどの細胞障害性因子が細胞毒性を発揮していることを明らかにした。本研究はこの現象の機構解明を目的としている。 メチル水銀によるTNF-α発現誘導にtmRT1のみならずNF-κBも関わっており、NF-κBの構成因子であるRelBの核内レベルをメチル水銀が増加させることが判明している。RelBはp100と二量体を形成して非古典的NF-κBとして機能するが、本年度は、p100発現抑制によって、RelB発現抑制と同様に、メチル水銀によるTNF-α発現誘導が低下し、核内RelBレベルの増加も抑制されることを明らにした。今後は、欠失変異tmRT1を作製して、tmRT1とRelBの結合様式とその結合がRelBの核内レベルに与える影響を検討する予定である。tmRT1とRelBは共に大脳および小脳に特異的に発現しており肝臓や腎臓にはほとんど発現していないことも判明し、これがメチル水銀による脳選択的なTNF-α発現誘導の主要な機構であると考えられる。また、これまでtmRT1と結合する蛋白質を複数同定してきたが、本年度はメチル水銀によって核内でtmRT1との結合レベルが増加する蛋白質を5種同定することが出来た。今後は、tmRT1/RelBを介したメチル水銀によるTNF-α発現誘導機構におけるそれら結合蛋白質の役割を解析する予定である。さらに、過酸化水素等の酸化ストレス誘導剤がtmRT1の発現を誘導すると共にtmRT1高発現によってこれら酸化ストレス誘導剤の細胞毒性が増強されることが判明し、tmRT1が有する未知機能の1つが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究により、メチル水銀によるTNF-α発現誘導にtmRT1のみならずNF-κBも関わっており、NF-κBの構成因子であるRelBの核内レベルをメチル水銀が増加させることが判明している。RelBはp100と二量体を形成して非古典的NF-κBとして機能するが、本年度は、p100発現抑制によって、RelB発現抑制と同様に、メチル水銀によるTNF-α発現誘導が低下し、核内RelBレベルの増加も抑制されることを明らにした。p100をp52に限定分解してRelB/p52の核移行を促進させるキナーゼであるNIKもメチル水銀によって活性化され、その発現抑制によってメチル水銀によるTNF-α発現誘導が低下した。これらのことから、メチル水銀はNIK依存的にRelB/p52を活性化させてTNF-αの発現誘導に関与していることが示唆された。tmRT1とRelBは共に大脳および小脳に特異的に発現しており肝臓や腎臓にはほとんど発現していないことも判明し、これがメチル水銀による脳選択的なTNF-α発現誘導の主要な機構であると考えられる。また、これまでリコンビナントtmRT1と結合する蛋白質を複数同定してきたが、本年度は免疫沈降法を用いて検討し、メチル水銀によって核内でtmRT1との結合レベルが増加する蛋白質を5種同定することが出来た。その中で、EXOSC2のみが発現抑制によってメチル水銀によるTNF-α発現誘導を抑制することが明らかになった。さらに、過酸化水素等の酸化ストレス誘導剤がtmRT1の発現を誘導すると共にtmRT1高発現によってこれら酸化ストレス誘導剤の細胞毒性が増強されることが判明し、tmRT1が有する未知機能の1つが示された。以上のように今後本研究を推進していくうえで貴重な知見を得ることができたことから、本研究は計画に従って「概ね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究内容をさらに発展させて、以下のように、機構解明研究を進める。 1.メチル水銀によるTNF-α発現誘導機構の解析:メチル水銀はNF-κBの構成因子であるRelBとtmRT1との結合を促進させることによってTNF-α発現を誘導する可能性が示された。そこで欠失変異tmRT1を作製して、tmRT1とRelBの結合様式とその結合がRelBの核内レベルに与える影響を検討する。 2.脳選択的なTNF-α発現誘導の機構:メチル水銀はTNF-αを脳選択的に発現誘導する。tmRT1とRelBは共に他の臓器に比べて脳中での発現割合が顕著に高い。そこで、マウスにメチル水銀を投与して、脳を含めた主要臓器中でのtmRT1の発現誘導とRelBの活性化を調べる。また、リポソーム中に封入したRelB siRNAまたはtmRT1 siRNAをマウス脳室内に投与し、脳中のRelBまたはtmRT1がメチル水銀によるTNF-α発現誘導に果たす役割を検討する。 3. tmRT1結合蛋白質の役割:tmRT1/RelBを介したメチル水銀によるTNF-α発現誘導機構におけるtmRT1結合蛋白質の役割を解析する。 4.2019年度は本研究の最終年度であることから、以上のメチル水銀に関する研究に加えて以下の研究を実施する。[4-1]酸化ストレス誘導剤に対してtmRT1が示す毒性増強作用:酸化ストレスによって活性化される転写因子の中からtmRT1発現誘導に関わる因子を特定するとともに、その因子によるtmRT1発現誘導機構を検討する。[4-2]tmRT1活性を阻害する化合物の探索:tmRT1活性を阻害する化合物は様々な用途に利用可能と考えられる。そこで、TNF-α遺伝子レポータープラスミドとtmRT1発現プラスミドを同時に導入した安定発現細胞株を作製し、tmRT1阻害剤を探索する。
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Research Products
(37 results)