2015 Fiscal Year Annual Research Report
バルクナノメタルが示す特異な力学特性の統一的理解とそれに基づく材料設計
| Project/Area Number |
15H05767
|
|---|
| Research Institution | Kyoto University |
|---|
Principal Investigator |
辻 伸泰 京都大学, 工学研究科, 教授 (30263213)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真直 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 産業利用推進室, 主幹研究員 (30360837)
Stefanus Harjo 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J－PARCセンター, 研究主幹 (40391263)
柴田 曉伸 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60451994)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
|
| Keywords | 構造用金属材料 / 超微細粒 / 強度 / 延性 / 粒界 / 加工硬化 / 変形双晶 / マルテンサイト変態 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、バルクナノメタルが示す種々の特異な力学現象、すなわち、(1)金属・合金の種類によらず普遍的に現れる降伏点降下現象。(2) Hall-Petch関係におけるextra-hardening、(3)加工軟化と焼鈍硬化、(4)室温におけるひずみ速度依存変形、(5)巨大なバウシンガー効果、(6)六方晶における不活性すべり系の活性化、 (7)変形双晶および変形誘起マルテンサイト変態の安定性の顕著な変化、などを統一的に理解することを目的とする。。得られる実験的成果をもとに、高い強度と大きな延性・靭性を具備する次世代構造材料としてのバルクナノメタル創製のための材料設計原理を基礎的に明らかにする。
平成27年度には、京都大学、J-PARC、SPring-8の各機関において、本研究を遂行するために必要な幾つかの主要設備を導入し、環境整備を行った。平成27年11月にJ-PARCで生じた中性子源設備の中性子標的容器の故障により物質・生命科学実験施設（J-PARC/MLF）の運転が全面停止となり、年度内に予定していた実験の実施が不可能となったが、繰越措置を行うことにより、平成28年8月までに当初予定の実験を遂行することができた。研究代表者が開発し獲得したプロセス技術によって、質の高い組織制御を施された様々なバルクナノメタルを作製した上で、それらが示す種々の特異力学現象の発現条件（材料の種類を含む）および材料組織との関係を系統的に調査した。降伏現象と加工硬化に注目し、デジタル画像相関法（DIC）、SPring-8の放射光X線回折を用いた転位密度等のその場測定、J-PARCにおける中性子その場回折による変形機構の解明などの手法を駆使した実験を行い、バルクナノメタルの作製に関する新たな知見を得るとともに、特異現象(1),(2),(5)に関する複数の興味深い成果を獲得した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の特異現象に関する実験を順調に実施し、データを獲得することができた。一部では興味深い結果が得られ、特異現象解明に向けて大きく前進している。平成27年11月にJ-PARCで生じた中性子源設備の中性子標的容器の故障により物質・生命科学実験施設（J-PARC/MLF）の運転が全面停止となり、年度内に予定していた実験の実施が不可能となったが、繰越措置を行うことにより、平成28年8月までに当初予定の実験を遂行することができた。得られた成果を、国内学会・国際会議発表25件、学術雑誌論文13件として発表することができた。これらの多くは研究室の大学院生や若手ポスドクによるものであり、先端的な研究を通じて若手人材育成にも貢献できた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が開発し獲得したプロセス技術によって、質の高い組織制御を施された様々なバルクナノメタルを作製した上で、それらが示す種々の特異力学現象の発現条件（材料の種類を含む）および材料組織との関係を系統的に明らかにする。降伏現象と加工硬化に注目し、デジタル画像相関法（DIC）、SPring-8の放射光X線回折を用いた転位密度等のその場測定、J-PARCにおける中性子その場回折による変形機構の解明などの手法を駆使して、微細結晶粒からなる多結晶体の変形挙動を統一的に理解できる理論を構築する。得られた理解を指導原理として、強度だけでなく延性・靭性にも優れたバルクナノメタルを設計・製造し、その力学特性を検証する。
平成28年度には、現時点で見出されている７つの特異現象のうち、(1)金属・合金の種類によらず普遍的に現れる降伏点降下現象、 (2)Hall-Petch関係におけるextra-hardening、(3)加工軟化と焼鈍硬化、(4)室温におけるひずみ速度依存変形、(5)巨大なバウシンガー効果に関する実験研究を引き続き実施する。特異現象(1)と(2)に関しては、純アルミニウムおよび極低炭素鋼のバルクナノメタルに関してLuders帯部および未伝播部の組織やナノ硬さ、そしてDICによる局部ひずみの定量化を行なうとともに、SPring-8における引張試験中その場回折により転位密度変化を測定する。特異現象(3)に関しては、粒内転位密度を変化させたバルクナノメタル試料を作製し、初期転位密度をTEM等で測定するとともに、放射光その場引張回折実験により変形中の転位密度変化の影響を明らかにする。特異現象(4)に関しては、純アルミニウム・バルクナノメタルを用い、引張変形の温度依存性を明らかにする。特異現象(5)に関しては、種々の粒径の試料を用いてバウシンガー試験を実施し、内部応力に基づく解析を行う。
|
