2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05782
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前多 敬一郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30181580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武内 ゆかり 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10240730)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | フェロモン / 生体分子 / 牛 / 獣医学 / 繁殖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は実施計画に基づいて研究を実施し、以下の成果を得た。 ①雄牛フェロモン活性に対するバイオアッセイ系の確立 鋤鼻神経細胞を用いた生物検定:2年6か月齢の交雑種雌牛から鋤鼻組織を採取して初代培養したのち不死化し、100個以上の細胞クローンを得ることができた。各細胞クローンからのtotal RNA抽出とcDNA合成を順次進めている。受容体強制発現系を用いた生物検定:マウスとヤギをモデル動物として強制発現手法の検討を行った。マウスV1Rf3については細胞膜での発現が確認され、カルシウムイメージング法においてフェロモン応答が検出されたものの、ヤギV1Rについては、膜移行が認められなかった。LHパルスを指標とした生物検定:東京大学附属牧場において、卵巣除去牛を作成しLHパルスを観察した結果、黄体期や卵胞期に比較してより明瞭なパルスが見られた。このため今後はin vivoの生物検定モデルとして卵巣除去牛を用いることを決定した。MUA記録システムを用いた生物検定:農業生物資源研究所の牛脳定位固定装置を用いて、雄牛の弓状核近傍にBDA(ビオチン化デキストランアミン)を微量投与したところ、正確に投与されていることが明らかとなり、牛における脳定位(電極留置)手術が可能であることが示唆された。 ②雄牛フェロモンのリガンド分子同定 現時点では雄牛フェロモンの産生部位が特定できていないため、畜産草地研究所において雄牛頭部のヘッドスペース捕集及び頭部被毛採取物からのヘッドスペース捕集を行いGC-MS測定を行った。その結果、特徴成分としてHexanal等の脂肪族アルデハイド、HexenalやHexadienal等の脂肪族不飽和アルデハイド及び脂肪族ケトン類が同定された。また、乳酸エステルや脂肪酸類も同定されたことから、現段階としては有意義な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において有効なフェロモンの生物検定法を得ることはもっとも重要な課題のひとつである。in vivoでは、LHのパルス状分泌およびMUAを用いた2つのアプローチはいずれも順調に進んでおり、検定法として確立できると考えている。また、in vitroの生物検定法の確立については、鋤鼻器細胞の不死化細胞のクローンを得つつあること、また受容体強制発現細胞ではヤギのV1Rの膜上への発現をめざして実験中であることなど、いずれ順調に推移しており、いずれ有効なin vitroの生物検定法を得られると考えている。また、GC-MSによるリガンド分子の同定法については、予備実験として雄牛頭頂部から得られたサンプルの分析に成功しており、フェロモン産生部位が同定されれば、ただちに分析、同定できる態勢を整えることができた。このように、初年度としては順調に実験を遂行しており、研究班員の互いの連携も整ってきたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もっとも力を入れて進めなければならないのは、MUAを用いたin vivoの検定法を確立すること、また鋤鼻器細胞の不死化細胞、あるいは受容体強制発現細胞のいずれかを用いた生物検定法を確立することである。MUAについては、200kg前後の雌牛に電極を留置することを前提に農研機構畜産研究部のグループと東京大学附属牧場が連携して、現在位置の確認を行っているところであり、28年度中にはLHパルスと同期する発火活動が取れるものと考えられる。27年度の後半からは日本で唯一ウシの脳定位手術が可能な農研機構の研究グループの全面的協力が得られるようになったので、今後の進展を期待している。また、in vitroの生物検定法である2種類の細胞については、東京大学の獣医繁殖育種学研究室と獣医動物行動学研究室を中心として、研究を進めているところである。鋤鼻細胞不死化細胞については、着々と受容体発現クローンの取得をめざすが、特に受容体強制発現細胞の作成においてはHEK293細胞株に代わる新たな細胞株により、ヤギおよび牛のV1R強制発現を目指す。これらの方法は世界的にもこれまで例がなく、新たな挑戦であるが、確立されればフェロモン分子の同定が一挙に加速されるので、多少の時間がかかってもぜひとも成功させたいと考えている。
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Research Products
(2 results)