2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05994
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鍛代 悠一 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90756165)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では既知抗がん剤の新たな機能と新規がん標的分子の同定を目指す。これまで申請者は抗がん剤ライブラリーを用いたスクリーニングにより、抗がん剤Aががん細胞死だけではなく、がん細胞からの免疫賦活化DNAの放出を促進し、がん免疫を活性化することを明らかとした。抗がん剤AはDNA複製に関わる遺伝子Xを阻害することでがん細胞の増殖抑制と細胞死を誘導することが知られている。しかし遺伝子Xを阻害する他の薬剤では細胞死は誘導することができるが、免疫賦活化DNAの放出は確認できなかった。そのため抗がん剤Aは遺伝子X以外の未知の標的遺伝子に作用することでDNAを介したがん免疫の増強を行っていると考えられる。そこで申請者は抗がん剤Aの未知のターゲット遺伝子を同定することで免疫賦活化DNA産生のメカニズムを解明し、がんに対する免疫療法の開発にも貢献できると考えた。そこで申請者は抗がん剤A固定化FGビーズを用いることでその結合タンパク質を同定した。FGビーズはフェライト粒子の表面をスチレン等の高分子で被覆したナノサイズのビーズであり、化学反応を介してその表面に様々な薬剤を結合させることができる。先行論文では細胞抽出液とサリドマイドを固定化したFGビーズを混合し、FGビーズと共沈したタンパク質を質量分析により解析することで、サリドマイド結合タンパク質であるセレブロンを同定し、サリドマイドによる催奇形性のメカニズムが明らかとなっている。この結合タンパク質をコードする遺伝子をCas-CRISPR法を用いて欠損させ、候補遺伝子欠損細胞を作成した。現在はこの遺伝子がどのように免疫賦活化DNAの産生に関与するのかを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗がん剤Aによる免疫賦活化DNAの産生には抗がん剤Aの未知の結合タンパク質が関与すると考えられる。そこで申請者は抗がん剤A固定化FGビーズを用いることでその結合タンパク質を同定できると考えた。FGビーズはフェライト粒子の表面をスチレン等の高分子で被覆したナノサイズのビーズであり、化学反応を介してその表面に様々な薬剤を結合させることができる。先行論文では細胞抽出液とサリドマイドを固定化したFGビーズを混合し、FGビーズと共沈したタンパク質を質量分析により解析することで、サリドマイド結合タンパク質であるセレブロンを同定し、サリドマイドによる催奇形性のメカニズムが明らかとなっている。そのため、まず抗がん剤A固定化FGビーズを用いることで抗がん剤Aの未知の標的タンパク質を同定し、次にその標的タンパク質を介した免疫賦活化DNAの産生とがん免疫に対する寄与を標的遺伝子欠損細胞株を用いて検証する予定である。既に上記の標的遺伝子の同定は完了しており、この遺伝子の欠損細胞も作成済みであるため、おおむね予定どおりに研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立した抗がん剤A標的遺伝子欠損細胞に抗がん剤A処理を行い、回収した培養上清をマウス骨髄由来樹状細胞に添加し、サイトカインの発現をELISA法及びqPCRにより定量することで免疫賦活化DNAを介した自然免疫応答の活性化に対する抗がん剤A結合タンパク質の寄与を検証する。また自然免疫シグナルにおいて重要な役割を担うNF-kB, IRF3, p38 MAPK, ERK等のリン酸化をウェスタンブロット法により検出することで免疫賦活化DNAによる細胞内シグナルの変化も併せて検証する。 次に抗がん剤A標的遺伝子の欠損細胞をC57BL/6マウスに同系移植し、抗がん剤Aを投与後、がんに浸潤するT細胞や樹状細胞をFACSにより解析する。その結果から抗がん剤Aの標的遺伝子による免疫賦活化DNAの産生誘導が細胞障害性T細胞の活性化や樹状細胞の成熟などのがん免疫の活性化に寄与するかをin vivoで評価する。
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