2015 Fiscal Year Annual Research Report
がんの薬剤耐性獲得による再発モデルの構築と薬剤応答予測の解析
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15H06008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 嵩矩 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80753756)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | データ同化 / 統計科学 / がん解析 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は,(i)薬剤耐性がんの再発シミュレーションモデルの構築,(ii)シミュレーションモデルの隠れ変数とパラメータを推定する統計的解析手法の提案,(iii)提案手法のがん腫瘍への適用の三段階に分けて考えており,初年度は主に,データの取得と文献の調査,再発シミュレーションモデルの構築を行うことを予定していた.
(i)候補となるシミュレーションモデルの構築に際しては,文献情報から既存の数理モデルを集め,候補となるモデルの集合を作成する.このステップは次年度に於いても継続的に行うこととなるが,後述するデータ同化手法のシミュレーション上での性能評価にも部分的に取り込まれている.
(ii)前述したデータ同化を用いたシミュレーションモデルのパラメータ推定とモデル評価手法に関しては,状態空間モデルと呼ばれる統計モデルを用いたデータ同化手法の開発に着手した.非線形状態空間モデルのパラメータ推定に利用されるモンテカルロ法の一種である粒子フィルタは,観測データの時点数が増えたときに近似精度が著しく低下するパーティクル縮退の問題が知られており, 尤度関数が解析的に計算出来なければ適用することが出来ないという問題がある.申請者はApproximate Bayesian Computationと呼ばれる計算手法を状態空間モデルに適用することでこの問題解決を図った(研究成果1)が,特にABC における理論的問題の解決法kernel-Approximate Bayesian Computation(以下kernel-ABC)を状態空間モデルへの適用に用いた手法の開発まで着手している.本手法の優れている点は,パラメータと潜在変数の理論的に正確な事後分布が計算出来るだけでなく, 既存のABC のモデル選択における理論的問題を克服することが出来ることにある.本研究の成果は次年度に学術誌にて報告する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述した通り,申請者は初年度の研究計画をほぼ順調に遂行している.(i)薬剤耐性がんの再発シミュレーションモデルの構築に関しては次年度も継続して構築を行う必要があるが,(ii)その解析に必要な統計学的手法の開発は順調であり,既に開発手法の一部に関して論文化を終えている.よって,次年度の研究計画である(iii)提案手法のがん腫瘍への適用に関しても次年度に着手可能であると考えている.本研究に於いて用いる生物学データは非常に新しいものであり,既に取得・公開されているデータに対する本手法の適用と投薬スケジュールの提案を目標とする.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度において,既存のモデルを基盤にし,数理モデルの構築とその数理モデルに於けるパラメータの推定・モデルの評価を可能とする統計学的手法の開発を行った.本年度では,前年度に引き続き手法の開発と発表を行い,加えて以下の研究計画を実施する.
(1)既に研究が進んでいる前立腺がんと卵巣感に対して,提案手法を適用した結果の医学的解釈を行う.臨床応用の観点から,特にと即制度が高いモデルに関する精査を行い,予測を裏付ける医科学的根拠を検討する必要がある.可能であれば,モデルとして選んだ前立腺がんと卵巣がん意外のがん腫に対しても,この実験で得られた知見を元に投薬スケジュールの予測,提案を行う. (2)本研究成果を一般に周知する上で,論文化(会議での公演)とソフトウェアでの公開という方法を考えている.ソフトウェア化は申請者がこれまでに公開しているソフトウェアと同様,Java言語での配布を考えており,所属研究機関のHP上から自由にアクセス出来るようにする.
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