2015 Fiscal Year Annual Research Report
皮下細胞適宜採取のための極低侵襲ウェアラブルシステムの開発
Project/Area Number |
15H06014
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鶴岡 典子 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70757632)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 超音波 / 細胞 / 吸引 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮下の生細胞を適宜採取する極低侵襲な細胞採取デバイスを目指し、超音波照射により皮下組織を極小範囲で破砕し、極細径針により吸引することにより細胞を体外に採取するデバイスの開発を行った。 使用する超音波の周波数を30-40 kHzに決定し、凹面型の超音波素子により皮下の1点に超音波を照射する構造とホーンを用いて針に超音波を伝搬させる方法の超音波素子設計を行った。凹面型で超音波を収束させる方法では使用する超音波波長が長いため、皮下数ミリの位置に収束点を設定するのは不可能であることが設計で分かったため、ホーンを用いた方法に絞ることができた。超音波素子は複数回使用し、吸引に用いる針は使い捨てにする必要があるため、超音波ホーンと針とを脱着可能でかつ超音波伝搬効率が良い構造を検討中である。 また、細胞採取動物実験の準備を行った。動物実験の際には吸引ポンプは市販のものを使用する予定であるが、複数回の実験で使用する必要があるため吸引した細胞がポンプ内に混入しない構造が必要である。ポンプに入荷した細胞が入り込むと吸引力が低下し十分な性能を得られない可能性がある。そこで、途中に細胞トラップを設けた吸引システムを提案した。本システムでは吸引ポンプと細胞採取用針とをつなぐ流路の途中にトラップを設け、吸引した皮下細胞は生理食塩水や細胞保存液にすぐに流れ込む。これにより吸引ポンプへの組織の流れ込みを防ぐだけでなく、実験中の採取した細胞の保護も可能となる。 来年度は、設計した超音波照射デバイスの試作と評価および提案した吸引システムと組み合わせて実際に細胞採取実験を行い、生細胞が採取できるかどうかの検討を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では4種類のデバイスを作製してから最適なものを選択する予定であったが、設計の段階で超音波トランスデューサの構造を1種類に絞れたため、今後試作するデバイス数を最低限に抑えることができ、ほぼ計画通りに進んでいるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
構造を決定した超音波振動を針に伝搬し、皮下に超音波振動を与えて皮下細胞を乳化し、吸引により皮下細胞を回収する装置の作製と評価を行う。細胞の採取は、1本の流路から蒸留水あるいは生理食塩水を皮下に少量注入した状態で、皮下に超音波を照射し、注入した溶液と共に細胞を吸引する。 (1)細胞採取機構の作製・評価:設計した圧電素子からホーンを介して細径針に伝搬させるデバイスを作製する。圧電素子は複数回使用するが、針部分は使い捨てにできるよう針のみ取り外し可能な構造とする。針の形状は、ステンレス製充実針(鍼灸針)表面に注入用と吸引用の2本の流路をポリイミドで作製した形状と、ステンレス製中空針(注射針)表面に注入用のポリイミド製流路1本のみを作製し、吸引はもともとある中空部分を用いる形状の2種類を検討する。 (2)マウス皮膚からの細胞採取実験:マウス背部の剃毛した皮膚に作製したデバイスを設置し、細胞採取を行い、採取した細胞個数やマウス皮膚への影響を考慮し、最適な構造を決定する。また、皮膚へのダメージを最小限に抑え、十分な細胞量を回収できる超音波強度及び吸引力を決定する。採取した細胞の状態を評価し、生細胞が採取できているかどうかを確認する (3)吸引及び注入デバイスの開発:本デバイスを一体のシステムとするため、注入液吐出用のポンプと吸引用ポンプの小型化を図る。本ポンプは生体組織と接する可能性があるため、液が触れる部分は全て使い捨てにする必要がある。このため、採血管のような内部を真空にした吸引機構や相変化による体積変化を用いた押し出し機構のような機械的駆動部を持たない構造のポンプとする。マウスを用いた実験において決定した吸引力や注入圧を実現できる構造のデバイスを開発する。さらに、完成した注入・吸引デバイスを実際に細胞採取機構と組み合わせ、マウス皮下からの細胞採取実験を行い、本システムの有効性を確認する
|