2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06050
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
玉原 亨 東北大学, 大学病院, 医員 (40756235)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 口腔内細菌 / 歯周病 / 動脈瘤 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病が大動脈瘤の発生および病態の進行に深く関わっていることが強く示唆されている。歯周病菌による直接的な大動脈瘤壁への感染とそれに引き続く炎症がその本質と考えられるが、それを証明するためには‘生きた’歯周病菌を大動脈瘤壁に検出することが必要である。これまでの報告は、大動脈瘤壁に歯周病菌が存在していることがPCR法や免疫染色法にて確認されているのみであり、血行性に動脈瘤に流れ着いた歯周病菌の残骸を検出している可能性が否定できていなかった。そこで我々は心臓血管外科との共同研究により、大動脈瘤手術時に摘出した標本から大動脈瘤壁に歯周病菌が存在することの確認に加え、嫌気培養を施行しその歯周病菌が生きた状態で存在することを証明することを目的とした。
平成27年度においては動脈瘤のサンプル採取、PCR法による検出・解析、蛍光免疫染色法による細菌の検出および細菌分離培養を予定していた。サンプル採取については心臓血管外科により摘出された動脈瘤壁を清潔の状態でそれぞれ-80℃に凍結保存していただき、5例のサンプルを提供していただいた。そのうち1例については動脈瘤壁のみでありコントロール壁はなかった。続いて、動脈瘤壁サンプルおよびコントロール壁についてビーズ破砕後にDNAを抽出した。まずサンプル中の細菌のDNAの有無を確かめるために、得られたDNA溶液をPCR法を用いて16rRNAをエンコードする領域のDNA増幅を試みた。結果として、得られたDNA溶液は細菌のDNAだけではなく動脈瘤壁のDNAも混ざっているため、これまで報告されている条件でのPCR法ではバックグラウンドが高く、増幅サイクルについても35回以上を要するなどコンタミが否定できなかった。そこで、アニーリング温度を検討し、従来の50℃ではなく55.7℃に設定すると増幅サイクル30回において単一のバンドが検出されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パイロットスタディにおいてはサンプルとして得られた動脈瘤壁を培養し、得られたコロニーの細菌を同定することで、動脈瘤壁に生きた細菌がいることを示した。この結果については常在菌の検出率が高かったため、培養後に検出されるコロニーと培養前に検出される細菌が一致することが必要と考えられた。このことから、培養前の動脈瘤壁からDNAを抽出し、PCR法を用いて細菌のDNAを増幅されることを試みたが、培養前のDNA溶液は細菌のDNAだけではなく動脈瘤壁のDNAも混ざっているため、これまで報告されている条件でのPCR法ではバックグラウンドが高く、増幅サイクルについても35回以上を要するなどコンタミが否定できなかった。そのため、PCR反応条件やサイクル数などの検証に予想よりも時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
培養前の動脈瘤サンプルから細菌のDNA検出法が整ったため、従来の予定どおり動脈瘤サンプルの培養を行う。動脈瘤中の生きた細菌の同定を行い、同定された細菌のDNAが培養前のサンプルから検出されるかの確認を行う。同時に蛍光免疫法を用いて、培養前のサンプルから細菌が検出できるかについても検討していく。ただし、PCR法での検出限界は細菌のDNAが1000個分ほど必要であり、蛍光免疫染色についてはさらに細菌数が必要と考えらえるため、培養後に同定された細菌が培養前のサンプルから検出されない場合があることも考慮に入れる必要がある。その後、マウス感染実験およびDNA microarray と計画通りに実験をおこなう。
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