2015 Fiscal Year Annual Research Report
心臓手術施行患者における自律神経活動の経時的変化の解明
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15H06053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 康之輔 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50755642)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 周術期看護 / 自律神経活動 / 心拍変動 / 術後心房細動 / 心臓血管疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
開胸心臓血管手術に伴う心房細動の発症には、術後の自律神経活動の乱れが関連していると推察されるが、詳細な検討はこれまで行われていない。したがって、本試験の目的は、心臓血管手術施行患者における自律神経活動の経時的な術後変化を解明することである。 平成27年度は、研究開始にあたり、東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得、UMIN登録を行った。本試験において重要な評価指標である自律神経活動の測定方法には、非侵襲的かつ定量的に自律神経活動を評価できる心拍変動周波数解析を採用、機器の購入を行い、試験開始環境を整えた。除外基準を満たし、同意が得られた患者の自律神経活動を継続的に測定した。 術前の自律神経活動バランスを基準とした場合、術後1日目より自律神経活動は著名に低下している印象であった。術後は人工呼吸器装着や鎮静剤が使用されることから、手術侵襲だけでなく、それらの影響も相加相乗されている可能性が考えられた。人工呼吸器離脱および鎮静剤未使用の状況下においても、明らかな変化は認められず、同様に低下している傾向であった。術後の自律神経活動の評価は、原則的に術後14日目まで連日行い、その後は21日目、あるいは退院日に最終評価を実施している。これにより、術後の自律神経活動がどの時点で回復傾向にシフトするかを明らかにできると考える。術後心房細動に関しては、同意取得後の開胸術施行症例において数例で発症した。術後心房細動発症例と非発症例の比較には、さらなる症例数が必要であり、今後も本試験を継続する必要性がある。また、測定装置使用に伴う有害事象は認められず、安全に試験を実施できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、本試験に関する当大学の倫理委員会の承認を得た後、70歳以上の心臓血管手術施行症例を対象に、術前および術後の自律神経活動の測定を実施している。平成27年度10月から3月までの期間で、70歳以上かつ心臓血管外科手術(初回の弁置換術や冠動脈バイパス術)を施行された症例は18例であった。70歳以上と高齢なこともあり、術前より心房細動を認める症例、体内式ペースメーカー植込み症例、心房性期外収縮が頻発する症例、同意拒否症例、透析導入後症例、緊急手術症例などにより、本年度の登録症例は8例にとどまった。計画書では15例を見込んでいたが、除外症例が多かったことから、やや遅れていると判断した。 次年度は、70歳以上という年齢制限をなくし、多くの症例数データを蓄積する過程で、年齢の要因を考慮できるように研究計画の一部変更を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本試験を実施することにより、心臓血管手術施行症例における術後の自律神経活動の推移が明確になると考えられる。さらに、術後の心房細動に自律神経活動の変化が関与しているのかどうかも明らかとなると予測している。しかし、それらを明らかにするためには、今後も症例数を増やし、自律神経活動の測定を継続していく必要性がある。また、自律神経活動だけでなく、心房細動発症に関連すると考えられている要因(術前の心機能など)も含め、検討を重ねる。 現在、70歳以上の症例を対象とし測定を行っているが、平成27年度の累積症例数を考慮すると、70歳未満の症例を除外せず、症例数を増やしていくのが最良と考えられる。症例数を増やした後、サブ解析として年齢の要因を評価していく。
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