2015 Fiscal Year Annual Research Report
奥浄瑠璃の表現形成と展開に関する基礎的研究―東北地方における中世文芸の享受と創造
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15H06058
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
宮腰 直人 山形大学, 人文学部, 准教授 (50759157)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 日本文学 / 奥浄瑠璃 / 中世文学 / 語り物 / 東北の芸能文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近世後期から明治期を中心に東北地方でおびただしく書写された、奥浄瑠璃諸作品の表現分析を通して、当該地域の古典文芸の享受とそれを基盤とする創造の諸相を明らかにすることを目的とする。以下、研究実績の中心になる2点に着目して略述する。 1、本年は、一次資料の書誌調査と、マイクロフィルムなどの二次資料の調査と収集を行い、「奥浄瑠璃諸本基礎目録」の作成に着手した。『田村三代記』や『奥州一宮塩釜本地』『竹生島の本地』『常盤御前鞍馬破』などの多くの新出本を確認でき、奥浄瑠璃研究を新たな段階へ押し上げるのに基盤となる目録を築きつつある。 2、本年は、申請者がこれまで取り組んでいる源義経に関連する語り物テキストのうち、奥浄瑠璃『天狗の内裏』の分析を行い、着実な研究成果を見込んだ。従来、お伽草子の同テキストの展開に位置づけられることが多い『天狗の内裏』を他の奥浄瑠璃テキストの表現と対照して読み解き、中世文芸の享受と創造という、本研究のテーマに関して、見通しを得ることができた。さらに、これまで文芸研究からは見過ごされてきた『羽州最上寺津深山権現之御本開』を研究の俎上に載せ、研究会で報告を行った。当該資料については、表現分析と考察を実施し、その成果の一端を研究会で口頭発表(「奥浄瑠璃の展開と地域社会―『羽州最上寺津深山権現之御本開』をめぐって」さんごの会、平成27年9月20日於立教大学)することができた。当該資料の表現分析の結果、奥浄瑠璃や古浄瑠璃と連続性をもつテキストであることが判明した。近年の研究で、山形県内にも奥浄瑠璃が伝来していたことが指摘されているが、当該資料の再発見は、そうした研究を裏付け、さらなる展望を拓くことが期待される。以上の成果は、順次、論文化し公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究費の交付決定が平成27年8月末であり、実質的な研究期間は短期間であったが、概ね当初見込んだ研究をすることができたと考えている。上記のごとく、「奥浄瑠璃諸本基礎目録」の作成に着手した結果、新たな伝本を大幅に追加できた。また、他方で中近世の文芸研究からほとんど見のがされてきた新資料(『羽州最上寺津深山権現之御本開』等)も見いだすことができた。お伽草子や古浄瑠璃諸テキストとの連続性及び和歌や教説に注目した各テキストの表現分析からは、本研究のテーマ設定の妥当性が確認でき、今後の研究の見通しがたったため、順調な進展であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、当初の計画どおりに、今後の奥浄瑠璃・日本文学・日本文化研究に資すべく諸伝本の基礎目録の作成及び研究文献目録の整備を基盤に研究を推進する予定である。申請時以降、視野に入ってきた山形県内の資料群もあり、適宜、研究計画を調整しつつ、研究を進めていく。 また、具体的な表現分析についても、27年度に得た見通しにそくして、新出伝本をあらたに考察の対象にいれ、多角的に研究を重ねていく。研究成果については、研究会での報告を起点にして、論文を執筆し、公表する予定である。また、公開講座での発表など社会還元も念頭において、さらなる研究の推進につとめたい。
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Research Products
(1 results)