2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本人英語学習者の「誤り分析」に基づく言語理論と教育実践の「知の循環モデル」開発
Project/Area Number |
15H06077
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山田 敏幸 群馬大学, 教育学部, 講師 (50756103)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 外国語教育 / 英語教育 / 理論言語学 / 言語心理学 / 誤り分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、言語教育の実践における、特に日本人英語学習者の文法的誤りデータ(例えば、John like apples)を収集し、言語研究の理論、特に生成文法理論に基づいた「誤り分析」を行い、理論の仮説群(例えば、主語動詞間のような一致のメカニズム)を検証するとともに、日本人英語学習者が誤りを犯しやすい文法項目を明らかにして、効率的な学習を促すための効果的な文法指導を考案し、その実践から得られる新たな文法的誤りデータを理論研究にフィードバックすることで、理論と実践の有機的な「知の循環モデル」を開発することである。 平成27年度は、10分間で1つのトピックに関して自由に英作文をする課題をとおして、2000以上の英文を収集した。収集した文のうち、文法的誤りを含む文を抽出した。文法的誤りを含む文450個を分析した結果、206文が冠詞の誤り、89文が前置詞の誤り、57文が数一致の誤り、49文が主語動詞一致の誤り、49文が時制あるいは相の誤りを含んでいた。冠詞や一致は学習者の母語である日本語ではあまり表出しない文法項目であるので、誤りを犯しやすいと考えれる。だが、前置詞(日本語では後置詞に対応する)や時制あるいは相は日本語でも明示的に表出する文法項目であるにもかかわらず、誤りが多く観察された。学習者の母語(日本語)と習得対象言語(英語)を単純に比較するだけでは学習者の文法的誤りを予測するのは困難であることが示唆された。平成28年度では個々の文法的誤りを英語母語話者の文法性診断に基づいて詳細に分析し、日本人英語学習者が誤りを犯しやすい文法項目を解明する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたとおり、日本人英語学習者の文法的誤りデータを収集できた。コーパスや文献では収集できるデータ数が限られたが、質問紙調査や授業実践(自由英作文課題によるライティング活動)におけるデータも収集できたことにより、当初の想定よりも多くのデータ、そして多くの種類の文法的誤りを収集できた。 文法的誤りデータの収集は順調に進んだが、英語母語話者被験者をスムーズに確保できなかったため、当初計画していた日本人英語学習者の文法的誤りの文法性診断を行うことができなかった。だが、想定よりも多くの文法的誤りデータを収集することができ、データを多くの文法項目に分類することができた。そのため、平成28年度に計画していた、生成文法理論に基づく「誤り分析」は順調に進むことが期待でき、また文法性診断はすでに準備が進んでいるので調査・実験もスムーズに実行できるため、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
英語母語話者による日本人英語学習者の文法的誤りの診断に関してはすでに準備が進んでいるので、平成28年度前半は、文法性診断に係る調査(容認可能性判断)、実験(自己ペース読文課題)を実施し、結果を分析する。また、すでに日本人英語学習者の文法的誤りの分類が進んでいるので、生成文法理論に基づく「誤り分析」も同時並行で進め、研究を効率的に遂行する。 平成28年度後半は、文法性診断および「誤り分析」の結果を踏まえ、日本人英語学習者が誤りを犯しやすい文法項目を解明する。当初の想定よりも多くの種類の文法的誤りが収集できているので、どの文法項目が誤りの比率が高いのかを明らかにする。その上で、特に誤りを犯しやすい文法項目を効率的に学習できるような効果的な文法指導を、「誤り分析」によって得られる言語・心理学的知見を踏まえて提案する。最終的には、研究を総括し、成果を学会発表や論文などで広く発信する。
|