2015 Fiscal Year Annual Research Report
フォールトトレラント量子計算に適した量子符号理論の構築とその古典符号理論への応用
Project/Area Number |
15H06086
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
藤原 祐一郎 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (20756142)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 量子誤り訂正符号 / 量子計算 / 量子情報理論 / 符号理論 / 組合せ論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,これまで古典情報の世界で考えられてきた符号理論とは異なる,量子計算機の実現に向けての「量子符号理論」の発展を目指し,また同時に量子符号理論の構築と発展により,従来の符号理論およびその基盤となる離散数学の発展に寄与することが目的である.本年度は特に,量子情報において最重要課題の一つである「フォールトトレランス」に焦点をあて,量子情報と古典情報を離散数学という道具で有機的に関連づけることで得られると目される,フォールトトレラント符号理論について,確率的組合せ論および組合せデザイン論の立場から考究した. 本年度得られた研究結果のうち,今後の本研究課題遂行の上で最も重要なものと目されるものは,LDPC符号と呼ばれる現代的な古典誤り訂正符号のエラーフロア改善問題と,量子誤り訂正におけるスタビラーザー符号の部分的フォールトトレラント化問題が,離散数学の言葉で抽象化した際には,同じ問題となることを発見したことである.この発見による影響について一例を挙げると,例えば量子計算機のための誤り訂正の高信頼性実現と,通常の無線通信などにおけるノイズ除去という一見別個の問題を,特定の条件下では,統一した形で研究することができるようになった.また離散数学による抽象化に成功したことにより,次年度における本研究にて,現在取り組んでいる前述の量子情報の問題と古典情報の問題の双方に,数学をより効果的に活用できるようになることが予想され,さらには離散数学の発展にも貢献できる可能性が見えてきた. なお,上記の成果については,次年度夏に開催される国際会議 IEEE Symposum on Information Theory にて発表することが決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子誤り訂正と古典情報での誤り訂正との関連を研究するという点において一定の成果が得られ,これは次年度夏に開催される国際会議 IEEE Symposum on Information Theory にて発表することが決定している.また離散数学をこれまでより積極的に活用する糸口もつかめた段階にあり,概ね当初の研究実施計画通りの進展が見られている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,量子符号理論とフォールトトレランスの理論を,離散数学によりこれまでよりある意味で統合すること,そしてその過程で離散数学や古典情報を扱う情報科学への発展にも寄与することであるが,本年度の研究成果により,両方の目的について,概ね当初の研究計画通りに研究を進めることが可能になった.特に,研究開始時点での予想と比較して,後者の目標においてより重要度の高い成果が得られる可能性が高くなってきたため,より後者の点に注力する方針である.
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Research Products
(5 results)