2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06088
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
秋葉 剛史 千葉大学, 文学部, 准教授 (30756276)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 真理論 / 機能主義 / プラグマティズム / ブレンターノ / 道徳的真理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度中は、本研究全体の課題のうちでも特に、課題II(思想史的研究)および課題III(具体的領域での適用)に関連する諸問題に焦点を当てて研究を進めた。 まず課題IIに関しては、当初の予定どおり、古典的プラグマティズムの伝統から真理の機能主義へとつながる重要な洞察をとり出したうえで、それを真理論上の有力な方針として動機づける考察を行った。その成果は、論文「真理論としてのプラグマティズムの可能性」(『現代思想』2015年7月号に掲載)として発表した。また初期現象学派に関しては、特にF・ブレンターノの後期真理論に注目し、その見解を真理の機能主義の先駆的形態として描き出すと同時に、この立場の理論的長所を明確化した。この成果は、論文「ブレンターノの真理論はどこに向かっていたのか」(『現象学年報』31集に掲載)として発表した。 さらに課題IIIに関しては、道徳的真理の領域に焦点を絞り、この領域の命題の真理性と関連の深い「実践性・行為指導性」の概念にまつわる問題にとり組んだ。ある道徳的命題が真なるものとして受け入れ可能であるためには、一般に行為指導性が要求される。しかしあるタイプの道徳理論(自己抹消的な道徳理論)は、従来、行為指導性を欠くとみなされる傾向があった。これに対して本研究が明らかにしたのは、そのようなタイプの道徳理論にも実は十分にこの行為指導性を認めうるということである。この成果は、論文「自己抹消的な道徳理論の問題は(あるとすれば)何か」(『応用倫理』第9号)として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究では、特に課題IIと課題IIIに関して、当初の予定通りの(ないし若干それを上回る)成果を挙げることができた。すなわち、課題IIの思想史的研究については、従来見過ごされがちだった古典的プラグマティズムと初期現象学派による思想的遺産と現代の真理論との接点を明らかにすることができた。また課題IIIに関しても、道徳的命題の領域における真理がどのように構成されるかについて一定の解明をなすことができた。 しかし、課題Iとして挙げた真理の機能主義の定式化作業に関しては、考察を進めてはいたものの最終的な形にまとめあげるには至らなかった。この点では当初の計画に対して若干の遅れが出ているため、次年度の研究ではそれを取り戻すことが一つの大きな目標となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、本年度から引き続き、課題Iに属する諸問題の検討作業を進める。そしてそれとともに、課題IIIの具体的領域での適用に関してもさらに考察を発展させる。 まず課題Iに関しては、複数の領域の真理からなる複合的真理(「mixed compound」と呼ばれるタイプの真理)の問題が、本研究が擁護しようとする真理の機能主義への重要な挑戦ないし試金石となることが前年度の研究により明らかになったので、この問題の重要性を明らかにするととも、それへの妥当な解決を含む形で真理の機能主義を定式化することを目指す。 また課題IIIに関しては、真理の対応説の現代版と位置付けることのできるTruthmaker理論と真理の機能主義との関連を明らかにすることを一つの大きな課題として設定する。さらに道徳的真理の問題についても引き続き考察を深め、なかでも真理のミニマリズム(ないしデフレ主義)と道徳的真理の関係について近年なされてきた議論に対し、真理の機能主義の観点から一つの調停案を与える。
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Research Products
(3 results)