2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06098
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高根 希世子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60756112)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 家族性大腸ポリポーシス / DNAメチル化 / 大腸癌 / 大腸腺腫 / KRAS |
Outline of Annual Research Achievements |
背景:我々はこれまで網羅的DNAメチル化解析を行い、散発性大腸癌を高・中・低メチル化群の3群のサブタイプに分類し、またその分類を可能とするGroup-1マーカー、Group-2マーカーの2群のメチル化マーカーを樹立している。大腸癌の約10%を占める遺伝性大腸癌には大きく家族性大腸ポリポーシス(FAP, ~1%)とリンチ症候群(5-10%)がある。FAPはAPCの胚細胞性遺伝子異常であり、リンチ症候群はMLH1を含むミスマッチ修復遺伝子の胚細胞性変異が原因とされる。しかしその後の癌化に必要な分子異常については、詳細はまだ不明である。 目的:本研究では遺伝性大腸癌のうちFAPを層別化し、各サブタイプで要求される分子異常など発癌分子機構の詳細な解明、未知の胚細胞性遺伝子変異の解明を行い、極端に大腸癌発症率の高い家族性大腸ポリポーシスに対する対策を行う。 方法:FAP患者8名の手術標本より、計110の検体(腺腫88、癌14、非腫瘍粘膜8検体)を採取した。検体は切片ごとに病理医の診断を得た上で、ダイセクションあるいはレーザーマイクロダイセクションによりサンプルを採取し、DNAを抽出した。DNAはバイサルファイト処理し、メチル化マーカー20個(Group-1マーカー6個、Group-2マーカー14個)についてパイロシーケンス法により定量メチル化解析を行なった。また、免疫組織化学染色により、腫瘍・非腫瘍組織におけるCTNNB1の検出、MassARRAYによりKRAS、BRAF遺伝子変異の有無について解析した。 結果: 全検体をメチル化頻度により階層的クラスタリングを行った結果、FAPには2つのサブタイプが存在することが確認された。さらにそのサブタイプは我々が以前提示した大腸癌3群のうちの2群であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はこれまで網羅的DNAメチル化解析を行い、60個のメチル化マーカーを樹立、臨床大腸癌症例149検体を階層的クラスタリングで層別化し、大腸癌の3群のエピジェノタイプの存在を明らかにしている。本研究の目的は家族性大腸ポリポーシスを層別化し、各サブタイプで要求される分子異常など発癌分子機構の詳細な解明である。層別化を行うにあたり、相当量の検体数が必要であり、当初より共同研究施設より検体の提供を受け、滞りなく病理学的診断、DNA抽出、メチル化定量解析、遺伝子変異解析を行った。しかし解析中に我々が必要としている遺伝性疾患でない可能性(臨床情報の不明確性など)を少しでも含んだ検体は除去されたため、検体数の上昇が当初の予定ほど見込めなかった。集められた検体だけでも家族性大腸ポリポーシスに2つのサブタイプが存在することは確認できたが、さらに明確な階層を確認するにあたり、以前に我々が解析を行った散発性大腸癌の149検体を用いることとした。それらに対し再度本研究の解析方法に合わせ実験を行い、階層的クラスタリングを行った結果、家族性大腸ポリポーシスのサブタイプが散発性大腸癌の低メチル化群と中メチル化群に相当することが解明できた。その反面、いまだ各サブタイプで要求される分子異常など発癌分子機構の詳細な解明は行われていない。今後はさらに検体数を増やしつつ発癌分子機構の解明を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
検体数:引き続き他施設と連携し、検体数を増量していく。検体数が目標数より不足する場合は、連携施設の拡充を行い対応する。 メチル化網羅的解析:引き続きパイロシークエンス、Infinium450KビーズアレイあるいはP-BAT法を用いて解析を行う。 網羅的発現解析:メチル化網羅的解析を行ったサンプルに対してRNAシークエンスを行い、網羅的発現解析を行う。家族性大腸ポリポーシスに関わる癌抑制遺伝子候補を同定するため、異常メチル化によりサイレンシングされる遺伝子を抽出する。発現およびメチル化は遺伝子のみならずマイクロRNAにも着目し、ゲノムワイドな異常メチル化の標的となりサイレンシングされるマイクロRNA候補も抽出。大腸癌細胞株にこれら候補遺伝子候補マイクロRNAを発現誘導し、増殖抑制機能を検討する。 エクソン変異解析:がんドライバー変異遺伝子125個(Vogelstein et al, Science 2013)、ミスマッチ修復遺伝子、Wntシグナル・TGF-βシグナル等大腸癌重要シグナル関連遺伝子、エピゲノム修飾因子など含む約200遺伝子のエクソン全領域についてキャプチャ・シーケンス法により網羅的変異解析する。癌・腺腫におけるAPC体側アリルや他の遺伝子の変異を詳細に比較解析する。APCの胚細胞性遺伝子変異のない症例については全エクソンシーケンスによる新規遺伝素因の同定も視野に入れる。
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[Journal Article] Genetic and epigenetic aberrations occurring in colorectal tumors associated with serrated pathway2016
Author(s)
Sakai E, Fukuyo M, Ohata K, Matsusaka K, Doi N, Mano Y, Takane K, Abe H, Yagi K, Matsuhashi N, Fukushima J, Fukayama M, Akagi K, Aburatani H, Nakajima A, Kaneda A
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Journal Title
International Journal of Cancer
Volume: 138
Pages: 1634~1644
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Two subtypes with distinct molecular features in colorectal neoplasms of familial adenomatous polyposis2015
Author(s)
Kiyoko Takane, Keisuke Matsusaka, Satoshi Ota, Eiji Sakai, Masaki Fukuyo, Kazuyuki Matsushita, Hideaki Miyauchi, Hiroyuki Aburatani, Yukio Nakatani, Tadatoshi Takayama, Hisahiro Matsubara,Akagi Kiwamu, Atsushi Kaneda
Organizer
第74回日本癌学会
Place of Presentation
名古屋国際会議場(愛知県、名古屋市)
Year and Date
2015-10-08 – 2015-10-10