2015 Fiscal Year Annual Research Report
フランソワ・ラブレーにおける魔術の諸相と、その文学的想像力への活用についての研究
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15H06114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関俣 賢一 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (80759283)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ラブレー / ルネサンス文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラブレー作品における魔術の諸相を明らかにし、それがいかにして文学的想像力へと奉仕しているかを考察するため、初年度となる2015年度は基礎作業として、文献の収集に主眼を置き、適宜その読解・分析を行った。特に年度末にはフェッラーラへ調査出張し、カルカニーニとロディギヌスに関する希少な文献資料を調査・収集した。 まずラブレーがハインリッヒ=コルネリウス・アグリッパ・フォン・ネッテスハイムに多くを負っており、その魔術分類(自然魔術、天空魔術、儀式魔術)が作品に反映されていることを再確認した。それを理論的文脈に位置づけるため、収集した二次文献をもとに「自然」や「驚異」といった隣接概念にも目配せをしつつ「魔術」概念に関わる議論を整理した。そこからラブレー作品の当該主題に関する幾つかの典拠を明らかにし、ヘルメス的新プラトン主義といった当時の思想的な文脈に置き直し得たが、これは今後の研究にとっても大いに益するものであろう。これにより作品分析が進展し、特に『第三の書』の挿話群を魔術的‐科学技術的な視点から照射することが出来た。また「隠秘的特質」に関する科学的言説をラブレーが謂わば自らの文学理論として取り入れ昇華していることを明らかにしつつあるが、これはラブレー作品における寓意魔術の文学性を解明するためには大きな前進と言えるであろう。 同時に、ラブレー作品と比較対象すべきカルカニーニの手になるラテン語作品2篇について研究を進めるべく、16世紀の印刷本原文から対象作品の転写を完了し、収集した資料を活用して重要な箇所の翻訳と注解を進め充実させつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究種目の初年度はおよそ半年間の助成となるため基礎作業が重視されており、資料の調査・収集、文献の読解・分析、議論の整理、ラブレー作品の分析、カルカニーニ作品の転写と翻訳・注解作業など、現在の進捗状況は研究計画の当初に想定していた進度とほぼ一致している。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は本研究の最終年度として総括段階に入る。これまでの成果を踏まえながら、ラブレー作品の分析をより具体的に詳細な箇所まで進める。またカルカニーニ作品の翻訳・注解を進めて精度を上げて行く。最終的にはそれらを総合して発表していきたい。
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Research Products
(1 results)