2015 Fiscal Year Annual Research Report
励起子系ボース凝縮体の直接検出とダイナミクスの研究
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15H06131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 悠介 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60755693)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 光物性 / 励起子 |
Outline of Annual Research Achievements |
数十年の懸案であった励起子ボースアインシュタイン凝縮について、実現、凝縮体の性質についての解明を目指す実験を行ってきた。希釈冷凍機を用いた極低温実験において、従来の発光測定では直接的な凝縮態の検出が難しいことを検証し、新たに、励起子の1s-2p遷移を用いた誘導吸収測定(Lyman分光)の実験系の立ち上げを進めてきた。本測定を行うためには室温の熱輻射を抑えて、プローブようの中赤外光を導入することが最大の問題であった。具体的には冷凍機内に光学系を構築することや、適切な光学窓を取り付けることが技術的な課題であったが、ここまでの進展で解決し、本測定法の最適化、完成ができた。また、誘導吸収分光の立ち上げとともに、凝縮体の空間的検出を行うためには、イメージングを実現する必要があり、安定的な測定系の実現も重要な課題であったが、実現し、イメージングが行えることとなった。また、Lyman分光法の特徴である正確な密度算出を用いた、極低温での日弾性散乱の散乱断面積導出についても、従来の時間積算測定と本測定での密度算出の結果が妥当なところに来ているところから、導出が可能となっている。また、それらの結果から課題となってきた非弾性散乱の原因を考察する段階に入っている。 また、発光の時間分解を用いた、ダイナミクス測定についても、ダイナミクスの基礎的パラメータである、移動度や拡散係数について抑えることができるようになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標としてきた、Lyman分光法の最適化・完成を実現し、凝縮体直接検出に必要なイメージングについても安定的にできることを示した。また、Lyman分光による密度算出によって非弾性散乱のメカニズムについての考察を得られるところまで来た。さらに発光時間分解測定についても、ダイナミクスの基礎的なパラメータ測定をしっかりできるようになった。これらのことから、本研究は予定どおり進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進展でBECの直接検出が実際に可能な条件が整えられた。このことから、凝縮体の直接検出を第一に進める。Lyman分光による空間分布抽出から凝縮体の直接検出ができた後は、凝縮体の動的な性質、コヒーレンスの制御や、集団励起モードの特性を検出する実験を行う。 まずLyman分光の時間分解への適用を試みる。このLyman時間分解分光が実現すれば、発光の時間分解実験とあわせて、凝縮体が形成されるダイナミクス、さらにはコヒーレンスを獲得していく過程について調べていく。 さらに高強度テラヘルツパルスやパルス的高密度励起子生成、熱パルス生成など凝縮体に外部からの摂動を加える手法について開発を検討する。外部からの摂動に対する応答をLyman時間分解分光から測定し、凝縮体の集団励起モードの解析などを行う。 これらは、励起子系凝縮体の動的な現象をあらわに抽出する実験となり、従来の冷却原子系で用いられているオーダーパラメータの解釈では説明できない新規な量子現象が現れる可能性がある。
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Research Products
(1 results)