2015 Fiscal Year Annual Research Report
地理情報システムを利用した最適な作業圃場配分の導出とその経済評価
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15H06151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 赳 東京大学, 農学生命科学研究科, 研究員 (30756599)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | GIS / 酪農 / 作業受託 / リモートセンシング / 計量経済分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はリモートセンシングやGIS・GPSを用いて土地被覆や受託圃場の位置や形状,作業手順等を明らかにした地理的データベースを作成し,地域のコントラクターを事例分析した上で,複数のコントラクターの収穫作業や受託圃場の最適配分,受委託の制度に変更があった際のコントラクター需要変化を定量的に明らかにし,生産効率性の変化や地域経済への影響評価を行うことを目的とする. 2015年度は,北海道根釧地域の牧草地について,数値地図や全球データ等から,交通インフラや行政界とその社会経済統計,気象データを入力し,リモートセンシング解析によって明らかにした土地利用/土地被覆と結合したGISデータセット作成を完了させた.このデータセットは,特に西春別地区の作業受託圃場について牧草地の圃場一筆一筆をポリゴン化して特定している. また,地域のJAおよびコントラクター組織に対して聞き取り調査を行い,トラクターやハーベスターの移動経路をGPSを用いて詳細に計測することで,収穫作業工程の評価と圃場巡回のシミュレーションを行った.受託圃場が1ヶ所にまとまった場合での作業と分散した場合での作業を比較すると,圃場が分散していた場合では,作業期間の後半に作業面積が低下する実態や,GISを用いて算出した最適な作業順との比較結果が悪化することなどを明らかにした.さらに,サイレージサンプルデータの収穫日と粗タンパク質やTDNの含有量の推計結果から,作業日数の変化による粗飼料品質改善の可能性を示している. 今後は,コントラクターの作業受託状況や圃場の分布による収穫日の変化に伴う粗飼料品質を変数とした酪農経営の生産効率性関数の推計,アンケート調査による需要分析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は北海道別海町における2005年~2010年の土地被覆を判別し,耕作地・牧草地の面積と分布を明らかにする予定であったが,本年度は,より近い2010年~2015年の土地被覆判別を行い,その作業を完了させることができた.その際,特に西春別地区については,目視で圃場区画の形状を特定する作業も完了させた.また,草地更新状況の推計を行い,草地更新が行われている土地とそうでない土地の地理的特徴の違いについての記述統計分析を行った. GPSによる農作業工程の記録は複数回にわたって実施し,そこで取得してデータを用いて,目標としていたコントラクターごとの最適な作業順のGISを用いた算出結果を得ることができ,農業経営での学会報告を行った.また,サイレージサンプルデータの収穫日と粗タンパク質やTDNの含有量の推計を行い,有意な結果が得られたうえで,以上の結果を対象地域のJAにフィードバックすることで,現場の営農管理にも役立てられている. 2016年度は酪農家を対象としたアンケート調査を行う予定であるが,JA地域の関係者との話合いは具体的に進んでおり,実現可能性は高いといえる. 以上から,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は酪農家に対してアンケート調査を行い,コントラクターサービスの需要関数を推計し,コントラクターが酪農家の生産量・生産効率性に与える影響を定量的に明らかにすることを最も大きな研究課題としている.このとき,調査結果は前年までに入手した乳険データ等の酪農生産に関連するデータや,リモートセンシングやGISを用いて構築した地理的データベースと結合することで,空間的な影響を加味した計量経済分析を行うことが可能である.また,アンケート票の設計及び推計する経済分析モデルの構築のために,コントラクターサービスを利用する酪農経営割合や,コントラクターサービスを利用する経営の特徴,飼料の生産と産乳量の関係など,基礎的なデータの分析と検討を十分に行うこととしている.さらに,酪農家やコントラクター,及びJAには事前の聞き取りを入念に行い,詳細な実態の把握に努める.コントラクター組織については,引き続きGPSによる受託作業データ収集を行い,経営レベルの分析も継続的に行う予定である.地域のJAやコントラクター協議会組織への連絡や話合いをより一層密に行い,現地組織の協力の下で十分な調査をする.このとき,現在までに築いてきた調査地域の関係者との信頼関係を生かし,円滑な調査が行えるものと確信している.
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Research Products
(3 results)