2015 Fiscal Year Annual Research Report
化膿レンサ球菌感染症における好中球細胞外トラップ分解産物の同定と機能解析
Project/Area Number |
15H06158
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 基嗣 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40755740)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 化膿レンサ球菌 / Streptococcus pyogenes / Group A streptococcus / NETs |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、先行研究で使用した化膿レンサ球菌菌株からgenomic DNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたdeep sequencingによって全ゲノム配列を解析した。次に、バイオインフォマティクスを利用して、NETs分解に関与する可能性のあるnucleaseを構成する候補遺伝子を網羅的に探索した結果、3遺伝子を有することが判明した。また、細胞毒性を有するDNA代謝産物として報告されているdeoxyadenosine産生に関わる代謝酵素である5’-nucleotidaseもGMPやAMP等の核酸分解活性を有していることから、NETs分解に関与していると考えた。当該化膿レンサ球菌菌株の全ゲノム配列情報から、5'-nucleotidaseに相当するドメインを検索することで、新規の二つの候補遺伝子領域を見出した。以上より、NETs分解に関与するDNaseとして、5つの候補遺伝子領域を見出すことに成功した。 次に、NETDP-X非産生DNase欠損株の作製に着手した。化膿レンサ球菌のgenomic DNAから上記候補遺伝子配列を切り出し、大腸菌由来ベクターへ載せてクローニングを行った。使用している化膿レンサ球菌が、カナマイシンに耐性を示したため、抗菌薬耐性遺伝子カセットにはクロラムフェニコール耐性遺伝子カセットを選択した。抗菌薬耐性遺伝子カセットを挿入したプラスミドを大腸菌に導入し、標的領域をPCRで増幅することで目的とするDNA溶液の抽出に成功した。現在、エレクトロポーレーション法を用いて、化膿レンサ球菌への抗菌薬耐性遺伝子カセット導入を試みている段階である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エレクトロポーレーション法による遺伝子欠損変異化膿レンサ球菌作製は、当初の計画よりもやや遅れているものの、ゲノム解析によって、従来報告のあるDNaseの他に、当初の予定では想定していなかった二つの新規候補遺伝子を見出したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述の経緯により、今後の研究計画を下記のとおりに修正する。 1. NETDP-X非産生DNase欠損株の作製 前年度に引き続き、遺伝子工学的操作を行い、抗菌薬耐性遺伝子カセットを用いて上述の候補遺伝子をノックアウトし、DNase欠損株の作製を推進する。必要に応じて、重複ノックアウト菌株を作製する。作製した欠損変異株の一般的性状解析を行う。 2. NETDP-X非産生DNase欠損株の培養細胞および実験動物に対する作用の検討 野生型菌株とDNase欠損株を上皮細胞系と単球・マクロファージ系培養細胞へ感染させ、Trypan blue染色法により細胞毒性の有無を確認する。また各菌株をNETsと共培養した上清の細胞毒性も検討する。さらに、野生型菌株とDNase欠損株をマウスへ経鼻感染させ、生存率、感染局所生菌数、鼻粘膜上皮細胞障害を比較する。感染局所生菌数は、化膿レンサ球菌を感染させたマウスを解剖して上顎洞粘膜組織を摘出して血液含寒天培地上で培養しコロニー形成数をカウントする。鼻粘膜上皮細胞障害は、凍結切片をWheat Germ Agglutinin、DAPI、抗化膿レンサ球菌抗体で染色し、共焦点レーザー顕微鏡で観察することによって評価する。これらの検討から、化膿レンサ球菌in vivo感染系での単球・マクロファージ細胞死に対する候補遺伝子の影響を解明する。
|