2015 Fiscal Year Annual Research Report
部分酸化と水素化分解の2段階処理による未利用炭素資源からの単環芳香族合成法の開発
Project/Area Number |
15H06208
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤墳 大裕 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (90757105)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | リグニン / 単環フェノール類 / 部分酸化処理 / in-situ水素化分解 / 反応速度解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,部分酸化前処理とメタノール溶媒存在下での水素化分解処理の2段階処理によるリグニンからの単環フェノール類合成プロセスの開発を行うことである.初年度は,(1)リグニンの部分酸化反応速度の定式化と(2)ベンゾフランのメタノール溶媒中,アルミナ担持白金触媒共存下でのin-situ水素化分解反応の検証を実施した. (1) リグニンの部分酸化反応速度解析:熱天秤を用いリグニン試薬を空気流通下において40 ℃から2, 5, 10 ℃/minの一定昇温速度で昇温した際の重量変化より実施した.いずれの昇温速度においても80~160 ℃の範囲で酸素取り込みによる重量増加を確認した.反応速度解析により,リグニンの重量増加を伴う酸化反応の活性化エネルギーは56~68 kJ/molであることを明らかにし,部分酸化反応条件を決定するための有用な知見が得られた. (2) in-situ水素化分解反応の検証:リグニン熱分解で生成が予想されるベンゾフランをモデル物質とし,メタノール溶媒,アルミナ担持白金触媒共存下で実施した.バッチ式反応器にベンゾフランとメタノール,アルミナ担持白金触媒を充填し,220 ℃で24時間反応を行ったところ,気相水素と2,3-ジヒドロベンゾフラン,o-エチルフェノール,少量のフェノールが生成し,ベンゾフランの転化率は11.5 mol-%に達し,水素利用効率(正味の水素生成量に対する水素化反応による水素消費量)は0.53となった.本反応条件ではフラン環の水素化および水素化分解のみが進行し,ベンゼン環の水素化は見られなかった.反応温度,反応時間を大きくするほどベンゾフラン転化率および水素利用効率は増加したが,気相水素量は10時間以降で大きな変化は見られなかった.触媒上で生成した原子状水素の一部は脱着し,気相へ放出された後再溶解し反応に関与した可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
部分酸化前処理においては,リグニン酸化時の挙動を反応速度解析により定式化し,前処理条件決定に有用な知見を得られた.また,in-situ水素化分解処理では,フラン環のin-situ水素化分解反応を実施し,メタノールからの水素生成と含酸素官能基の水素化および水素化分解が可能であることを明らかにした.当初の目標であった触媒担体の影響の検討には至らなかったが,概ね順調であると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
リグニンから単環フェノール類を合成するプロセス構築を目標に(1)リグニン部分酸化時の反応部位の特定と(2)反応基質と触媒担体がin-situ水素化分解反応に及ぼす影響の解明を行う. (1) リグニン部分酸化時の反応部位の特定:温度一定条件でリグニン酸化実験を実施し,含酸素官能基量の経時変化をFT-IRにより測定,重量変化と元素組成と併せて定量を行う. (2) 反応基質と触媒担体がin-situ水素化分解反応に及ぼす影響:リグニンからのフェノール類合成においてはフラン環の他にエーテル基やアルキル基の切断が不可欠である.モデル物質としてジフェニルエーテル,ジベンジルエーテル,ジフェニルプロパンを用い,それぞれin-situ水素化分解を実施する.また,現在までの反応系では気相水素が多く生成しており,反応器質の触媒担体上での吸着量が小さいと考えられる.そこで,異なる酸性質を有する触媒担体を用いin-situ水素化分解を実施し,担体の酸性質と水素化分解反応性の相関を明らかにする. 最終的にはリグニン試薬からの2段階処理による単環フェノール類合成プロセスを実証する.
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