2015 Fiscal Year Annual Research Report
足場タンパク質JSAPによる細胞のがん化と細胞分裂制御機構
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15H06234
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中里 亮太 金沢大学, がん進展制御研究所, 博士研究員 (30761803)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 癌 / 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、JSAP発現増加細胞における核形態異常の誘発が、どのようなメカニズムで起こるかについて検討を行うため、JSAPの変異体発現ベクターを用いて解析を行った。さらに、核形態異常を誘発する原因として知られる、細胞周期のM期における中心体の複製や成熟異常の可能性について検討を行うため、免疫細胞化学染色により解析を行った。 JSAPはモータータンパク質であるキネシンと結合し、細胞内輸送制御因子としての役割が知られていることから、キネシンとの結合ドメインを欠損した変異型JSAPを発現するJSAP_⊿KBD発現ベクターをHeLa細胞に遺伝子導入を行った。その結果、野生型JSAPで多数認められた多核化などの核形態異常を持つ細胞がほとんど認められなかった。 また、中心体のマーカータンパク質として知られるγ-チューブリン抗体を用いて免疫細胞化学染色を行ったところ、野生型JSAPを遺伝子導入したHeLa細胞では、細胞周期のM期において、1つの細胞に本来2つである中心体が、3つ以上ある細胞が多数観察された。しかしながら、JSAP_⊿KBD発現ベクターではその様な現象は認められなかった。 以上の結果より、JSAP発現増加による核形態異常の誘発は、M期における中心体数の異常による娘細胞への染色体分配異常によって引き起こされている可能性が示唆された。また、これらの現象はキネシン結合ドメインを欠損したJSAPでは観察されないことから、キネシンを介した細胞内輸送機構の異常が原因と考えられる。これらのことから、JSAPによる細胞のがん化と細胞分裂制御機構に着目した解析を行うことは、未だ不明な点が多い、がん細胞における染色体不安定性の獲得メカニズムの解明に大きく貢献すると考えられ、非常に意義あるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果により、研究の目的であったJSAP発現増加による核形態異常の惹起が、キネシンのアダプター分子としての機能依存的であることを明らかにし、さらにM期において中心体の形成異常が起こることを明らかにしたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、JSAP発現増加によるキネシンとの相互作用を介した細胞の性質異常の誘発が、どのような分子を標的としたものなのかを検討する。さらに、同定した標的分子の機能にどのような影響を与えるかについて、特に細胞内局在性に着目し、検討を行っていく。
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Research Products
(2 results)