2015 Fiscal Year Annual Research Report
ディスコース分析を通じた子どもの心理援助における社会文化的文脈の理論化および検証
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15H06237
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
綾城 初穂 福井大学, 教育学研究科(研究院), 特命助教 (60755213)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ディスコース分析 / ポジショニング理論 / プレイセラピー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は主に次の3点について研究を進めた。すなわち、①子どもに心理援助を行った事例についてポジショニング理論とディスコース分析を通して検討、②カウンセリング場面をポジショニング理論とディスコース分析を通して検討、③社会文化的文脈(ディスコース)を考慮に入れた特に学校場面で実施できる子どもへの心理支援についての検討、である。 ①については、研究計画で記した通り、ポジショニング理論の枠組みを用いて個別の心理援助事例(プレイセラピー)をディスコース分析によって検討した。研究協力者として記載した8事例中3事例については概ね分析が終わっており、内定中のものを含め国際学会での発表や紀要論文として提示している。また、その他の2事例については保護者への面接という点で発展的に検討し、ほぼ分析を終了しているため、近日中に雑誌論文への投稿を予定している。②では、そもそも心理援助においてポジショニング理論の枠組みによる検討は妥当か、またディスコース分析は心理援助にどのような意義を持ち得るといったのかといった点をより精緻に検討するため、成人のクライアント2事例について分析を試みた。これらの分析は国際雑誌へ投稿し掲載あるいは再審査中である。③では、ディスコース分析やスクールカウンセリングを専門とするカリフォルニア州立大学John Winslade教授らが記した子供の心理援助の英書(Safe and Peaceful Schools)の検討を通して、子供の心理援助をディスコースの観点から行うことを検討した。本書はすでに訳出を終えており、出版も予定している。 これらの分析を通し、現在では心理援助に際して見られるディスコースの具体的内容、及びセラピストのポジショニングによる具体的な援助方法が明らかとなってきている。平成28年度は個々の知見を帰納的にまとめ理論化していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度中に個別事例の分析が終わっていない。長い分析時間を要するディスコース分析の性質上、研究計画においてすでに想定されていた事態であり、研究計画に記した対処に基づき、現時点での分析事例のみから何らかの理論化を進めることについて検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、現在進行中の分析を終えた上で、平成27年度中に終了した分析とともに事例を帰納的に統合し、子どもの心理援助における社会文化的文脈の理論化を目指す。また、事例の分析から具体的な援助方法についても見えてきたため、援助のあり方そのものについても理論化することを予定している。これらに加え、海外でのディスコース的枠組みに基づいた子どもへの心理援助実践と照らしながら、日本で援助を実施するにあたっての具体的な提案をしていく。
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