2015 Fiscal Year Annual Research Report
早産における分子状水素の予防効果と母獣長期投与の胎仔への影響
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15H06282
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中野 知子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90754953)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 早産 / 炎症 / 分子状水素 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、CD-1妊娠マウスを用いて、妊娠15.5日目にリポポリサッカライド(LPS)を500μg/kg腹腔内投与した群をLPS群(炎症性早産モデル)とし、腹腔内投与24時間前から50%飽和水素水を母獣に自由飲水させる群を分子状水素-LPS群として、妊娠継続期間を比較したところ、LPS群では腹腔内投与後24時間以内の早産を90%に認めたのに比べ、分子状水素-LPS群では60%と改善傾向であった。またLPS群の腹腔内投与後から早産に至るまでの時間の中央値は15時間であったのが、分子状水素-LPS群では20時間と5時間の妊娠期間の延長を認めた(p=0.014)。 さらに、妊娠15.5日目にPBSを腹腔内投与する群をコントロール群とし、前述したLPS群と分子状水素-LPS群の3群(各群n=6)で、PBSまたはLPSの腹腔内投与6時間後に子宮組織を回収し、炎症性サイトカイン(IL-6、TNFα、IL-8)や子宮収縮関連タンパク(Cox-2、コネキシン43(Cx43)、オキシトシンレセプター(OTR))、また早産に重要な役割を果たしていると言われるエンドセリン-1(ET-1)について、半定量RT-PCRを用いてmRNAレベルでの発現を比較検討した。その結果、LPS群でいずれの因子も発現が上昇していたが、分子状水素-LPS群でIL-6、TNFα、Cox-2、Cx43、OTR、ET-1では有意差をもって発現が低下していた(すべてp<0.05)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
半定量RT-PCRの結果では、子宮組織において、早産の重要な分子であるIL-6やET-1などの分子や、子宮収縮関連タンパクであるcox-2やCx43、オキシトシンレセプターがLPS投与によってmRNAレベルで発現上昇することを、分子状水素の前投与により有意差を持って改善させることが分かった。またLPSによる早産を、分子状水素投与により妊娠期間延長を認めた。しかし引き続き水素の至適投与法や至適濃度など、より効果のある投与方法を検討していく必要があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、水素の至適投与法や至適濃度など、より効果のある投与方法を検討していく。また子宮組織における分子状水素の炎症性早産の予防効果を分子学的に解明するために、現在までに出ている炎症性サイトカインや子宮収縮関連タンパクの結果について考察し、分子状水素の作用機序にせまる。その結果をまとめて、論文報告する。
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