2015 Fiscal Year Annual Research Report
棒状分子を基盤とする硫黄の特性を利用したネマチック液晶材料の創製
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15H06285
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
荒川 優樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30757365)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 棒状分子 / 液晶 / 硫黄 / ネマチック相 / サイボタクチックネマチック相 / 複屈折 |
Outline of Annual Research Achievements |
末端に硫黄を有する棒状分子に液晶性を付与するための分子設計指針を確立をすることを目的とした。一般に、そのような分子構造は硫黄の引力相互作用により結晶化しやすく、液晶性を示しにくいことが知られている。本研究では硫黄源としてアルキルスルファニル基(アルキルチオ基)を導入した様々な棒状分子を設計・合成し、液晶状態における構造解析を行った。まず、共有結合と比較して動的な分子間の水素結合を利用することで、結晶性の抑制を目指した4-アルキルスルファニル安息香酸誘導体の合成を行った。偏光顕微鏡(POM)観察ならびに示差走査熱量測定(DSC)により、流動性の高いネマチック相を示すことを明らかにした。さらに、それら4-アルキルスルファニル安息香酸誘導体を原料として用いたヒドロキノンとのエステル化反応により1,4-フェニレンビス(4-アルキルスルファニルベンゾエート)誘導体の合成を行った。これらもPOM観察ならびにDSCにより、おもに降温過程においてネマチック相の形成が確認された。興味深いことは上記2つの分子群において相転移温度やエンタルピーだけでなく、液晶相の形成や安定性に明確な末端アルキル鎖の偶奇効果が観測されたことである。偶数系の誘導体では昇温・降温の両過程においてネマチック相を示すものが多かったが、奇数系では降温過程のみか、もしくは液晶性を有さないものが多かった。また、液晶状態の磁場配向試料を用いた広角X線構造解析を行った。その結果、アルキルスルファニル基誘導体には、同じ炭素数のアルコキシ基誘導体と比較して、隣接分子の接近やネマチック相中に形成される分子クラスターサイズの向上が確認された。これらは、流動性の高いネマチック相においても硫黄間相互作用が機能していることを明確に示している。本研究は流動相においても硫黄の相互作用が働くことを示した初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動的な水素結合や、回転が可能なエステル基など、運動性の高い結合を液晶分子の剛直部位(メソゲン)に導入することで、末端に硫黄を有する棒状分子における明確な液晶相の形成に成功した。さらには、それらの磁場配向試料を用いた広角X線回折測定より、アルキル基やアルコキシ基誘導体と比較することで、ネマチック液晶場における硫黄の相互作用を明らかにした。このように当初の目的である液晶性の付与ならびに硫黄の効果を解明することができたのでおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
継続して新規な含硫黄棒状液晶分子の設計および合成を行うとともに、今後は材料への展開も行う。合成した分子の複屈折の測定や誘電率(異方性)を測定することで、光・電子材料への応用を目指した研究を展開する。
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Research Products
(3 results)